「7つの習慣」それは、人が人として「あるべき姿」に近づくための、唯一最強のツール。

この鼎談は、2011年11月30日に発売されたプレジデントムック『運をつかむ習慣―解明!「運がない人」は、なぜ運がないのか』で紹介されている鼎談記事の全文です。フランクリン・コヴィー・ジャパンのセミナー講師3名(上條 富彦、佐藤亙、竹村 富士徳)が「7つの習慣」について語り合いました。

【出演者プロフィール】

上條 富彦(かみじょう・とみひこ)
フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社 シニアコンサルタント。外資系事務機メーカーに直販営業として入社。文具・事務機器メーカーに移り、営業企画部長を歴任後、全社の教育体系および体制の抜本的改革に取り組む。その後、新規事業立ち上げ準備室室長を歴任した後、自分のミッションを追求するため、フランクリン・コヴィーのインストラクターとしての道を選択し、現在に至る。
佐藤亙(さとう・わたる)
フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社 取締役副社長。モトローラ株式会社入社以来約20年間、モルガン・スタンレー、マイクロソフト、SAP などの外資系の人事畑を一貫して歩く。マイクロソフト、SAPジャパンで人事部門の責任者を歴任した後、2006 年より現職。セミナープログラムの開発および講師マネジメント、人事部門などを担当。
竹村 富士徳(たけむら・ふじのり)
フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社 取締役副社長。1995年、旧フランクリン・クエスト社の日本法人に入社。経営企画、経理全般、人事、プランナー関連商品の開発、販売、物流など、多岐にわたって担当。1998年、コヴィー・リーダーシップ・センターとの合併に伴い、フラン クリン・コヴィー・ジャパン株式会社の取締役に就任。2001年までに日本法人の利益率を大幅に改善し、インターナショナル部門でトップレベルの業績達成に貢献する。

●今、なぜ「7つの習慣」が再評価されるのか

現在、「7つの習慣」が再評価されているようです。メディアに出演され、コヴィー博士とも共同でセミナーを実施された竹村副社長は、その要因をどのようにお考えですか。

竹村:最近、アマゾンのビジネス書ランキングを見ると、再び上位にランクインしていますね。他にも、松下幸之助、ピーター・ドラッガー、カーネギーといった、いわゆる古典といわれるビジネス書が多くランクインしています。本物というか、「7つの習慣」でいえば原則に原点回帰したようです。いまの激流の時代ですし、アメリカでは資本主義経済が音を立てて崩れている状況です。日本に目を向ければ、東日本大震災によって起きた日本人の心や価値観の変化において「7つの習慣」の内容は非常に共鳴しやすいのではないでしょうか。

大震災後に見られた、日本人の仕事観の変化に関する調査の結果がここにあるのでご紹介しましょう。仕事のモチベーションの源泉に関する項目では、2010年2月に行った調査で53%だった「給与」が、大震災後には17.8%まで急落しました。逆に「社会や他の人に貢献できること」は、3倍くらいに増えています。それから、「仕事を通じて社会貢献をしたいと考えるようになった」は、大震災後、約6割の人が「イエス」と答えています。他にも「家族と過ごす時間が増えた」とか、「バランスがとれた生活」も約6割の人が「イエス」と答えています。この結果には、「7つの習慣」のさまざまなエッセンスが見て取れます。人々の考え方や価値観、仕事のやり方、態度が、明らかにこちらの方向に変わってきており。ビジネスに限らず、「7つの習慣」が伝えているものに、人々の心が戻ってきているように私は感じます。

すでに受講者2万5千人以上、通算800回以上の研修を行ってこられた上條講師は、企業研修において、何らかの変化を実感されることはありますか。

上條:私が最近お手伝いをしていて思うのは、企業価値である行動指針や理念についてもう一度、社員に自覚させたり浸透させたりしたい、そういうニーズをお持ちの企業が増えているということです。その意味では、竹村さんがおっしゃる原点回帰のように、もう一度、本当に大切なものに立ち返ろうとしていて、企業としての力、あるいは社員個々の力を引き出すにはどうしたらいいのかを考え、強く求めているように思います。

このような状況では、一人ひとりに知識を付与したところで相乗効果は生まれません。一人では絶対に出せない結果を求めていくのが組織であるべきなのに、現実は皆バラバラ。それは誰もが感じていたことだったのでしょう。そこに、今回の大震災が起きて、多くの人々が「あれは、やっぱり違うんだ」と気がつく大きなひとつのきっかけになった。今のデータを聞いて、改めてそう思いました。

外資系の人事関連の現場に長くいらっしゃった佐藤副社長が、人事の立場で見た場合、この状況をどのようにお考えですか。

佐藤:かつて私がいたIT業界は、激しい変化の象徴みたいな業界ですから、新しいスキルに追いつくだけでも大変です。そういった状況で、何を軸にしなければならないのか?という点に、やっと皆さんが気づき始め、それをビジネスのなかに持ち込むことの必然性について改めて認識されているのではないかと思います。そこでいろいろ探されたら、「7つの習慣」のなかに答えを見つけていただいたという感覚を持っています。

従来より、形にできないもの、形で表現しにくいものを軸として社員に根付かせない限り、本当の意味での競争力や社員力がついてこない、ということはわかってきつつあったのでしょうが、そこの部分を、どういう形で、あるいはどんな言葉で表現すればいいのか、それがよくわからなかったのだと思います。しかし昨今、人事の方々と話していると、共通の話題としてそれを形にする施策について度々、堂々と話せるようになってきました。人事部門にも確実に意識の変化を感じ取ることができます。

●「7つの習慣」は総合ビタミン剤のようなもの

「7つの習慣」のどの内容が、そうした環境の変化にマッチしているのでしょうか。

竹村:第8の習慣のなかでも語られているように、人をモノではなくて、人格として扱っていく、個の大切さを重視していくのが本来の姿です。また、私たちが行った調査でも、幹部、中間管理職、フロントラインの方たち、どの階層の方々も「人間力」といったものに重きを置いている。そういう結果が出ています。このあたりも「7つの習慣」と今の市場の流れが適合している点といえるのではないでしょうか。

もうひとつのキーワードは「貢献」でしょう。上から指示されたことをこなす、お給料のために会社に行く、そういう価値観ではなくて、自分のなかにある望みや、社会に貢献したいという個々の思いが発散されるようになった現在の流れに対して、「それでいいのです」あるいは「そうあるべきなのです」と、後押ししているのが「7つの習慣」や「第8の習慣」なのかもしれません。

佐藤:「7つの習慣」が、もし論文や一つの物語だとしたら、きっとここまで受け入れられなかったのだろうと思います。「7つの習慣」は、人が理解して、受け入れて、さらに応用できるように体系化(パッケージ化)されているというのが強みだと思います。

また、コンテンツにストーリー性があるのも強みです。例えば私的成功から公的成功へ、というのも一つのストーリーです。私的成功のなかでも、まずは自分が主体であることから始まり、主体的になってどこへ向かうのかという第二の習慣があり、目的地が見えたら今度はそこにどうやってたどり着くのかを考える第三の習慣があって…と、これらがすべてストーリーになっているわけです。それぞれのパーツを扱っている書籍や文献ならいくつもありますが、それらはどれもパーツごとに独立しているため、一つの読み物として、あるいは一つのコンテンツとしてそれぞれを取り入れることは可能だけれども、やはり分散してしまう。かつ理解と記憶の定着が鈍ることもあります。そうさせないところが体系化されていることの強みでしょう。

体系化とは単にモデル図に落とせばいいわけではありません。ストーリーになっていると、読んだ人の理解がより一層深まり、かつ、その人のなかにしっかりと残ります。それがつまり、「使える」というステージに移行できることを意味しているのです。それで自己変革ができるようになるのではないかと私は思います。

竹村:私も同感です。コヴィー博士は「7つの習慣」について、「これは別に個人が開発や発見したものではなくて、ビタミンみたいなものだ」とよく言っています。彼の功績は、それに名前をつけて、パッケージングしたこと。「7つの習慣」は「成長の連続体」のなかで説明されているとおり、どれか一つが欠けてもダメなんですよね。その時々や個人の成熟度に合わせたレベルというのはあるかもしれませんが、本当の意味での効果性を発揮していくことを考えたとき、7つのすべての習慣と、そこに潜む原則が必要になってきます。

自分の課題が見えない人にとっては、『7つの習慣』を読んでいったい何が手に入るのだろう、というのが率直な疑問だと思います。それはどのように解釈すればいいとお考えですか。

佐藤:「7つの習慣」にある7つのビタミンの効用を知ることが、自分のチェックリストにもなりますよね。自分にはこれが足りなくて、これを補給しなければならないんだな、ということがわかります。そこが総合ビタミン剤の強みだと思います。

竹村:フランクリン・コヴィーは、ビジネス・パーソンや個人のお客様に対して研修や書籍を提供しています。さらに、エデュケーション部門では子ども向けにも「7つの習慣」を提供しています。ということは、「7つの習慣」は、効果性を上げたいと思っているすべての人々に有効なものだと私は思います。「7つの習慣」とは、コヴィー博士がつくったものではなく、成功を収めた方々の習慣を体系化し、「7つの習慣」としてまとめたものです。したがって、効果性を高めていらっしゃる方は、だいたい実践しているものでもあります。「7つの習慣」の原則や習慣は、効果性を高める道における通行手形みたいなものだと思っていて、効果性を上げたい、生産性を高めたい、より満足したい、より良い人生を歩みたい、というように「より良くしたい」と思う人は、「7つの習慣」を知っていても、知らなくても、必ずそこを通ることになります。

今、佐藤さんがおっしゃったように、「7つの習慣」に触れて、自分の足りない部分に気づくことで、より良い何かをつかんでいくことができます。最初は明確な課題がなかったとしても、足りない場所を通るときに課題を見つけたり、もっと強めなければならないと感じるところを発見できたり。そんなツールでもあると思います。

●成功する人は「7つの習慣」を無意識に実践している

そうすると、「7つの習慣」は、成功への道を歩むためには避けて通ることのできない道、ということになるのでしょうか。

上條:人はたった一回の人生を歩みます。一つ言えるのは、人は決して一人では生きられないということです。だれかに助けられる、だれかと寄り添う、そういうことだけでなく、たとえば何かを食べるにしても、それを生産、流通、販売してくれる人が関わっています。個人がどういう思いを持ってその人生を生きるかは自由ですが、だれも一人で生きることはできません。人が人と関わりながら生き抜いていくとき、どうあっても避けて通れないものが、「7つの習慣」のエッセンスに凝縮されていると思います。これは私の考え方ですが、人と寄り添いながら生き、望む人生があるならば、おそらく「7つの習慣」を避けて通ることはできないでしょう。

竹村:私がいろいろな方にインタビューをさせていただいているなかで、毎回おもしろいと思うのは、その方が「7つの習慣」を知らなくても、その行動や考えのほとんどを「7つの習慣」に当てはめることができるという点です。彼らの言っていることを「成長の連続体」や原則のフレームに落とし込んでみて足りない部分があった時、「実は『7つの習慣』ではこんなことも言っています」と申し上げると、皆さんが「なるほど」と納得されるんですね。毎回、必ず会話がそのパターンになります。

上條:そうですね。どの企業にもバリューや行動指針があって、そのお話でいくと、どれも必ず「7つの習慣」に重なります。だから、「7つの習慣」を使ってこのバリューを浸透させたい、と企業や人事の方が考えるのも自然なことなのです。

佐藤:成功している人は、その部分が血となり肉となっているんですよね。それをいちいち何とかの習慣なんて彼らは考えないし、知らないだけであって、ちゃんと身についています。そういう社員が増えれば、組織にとっては願ってもないことですよね。

●人生の成功をどう捉えるか

「7つの習慣」の書籍の正確なタイトルは、『7つの習慣 成功には原則があった!』ですが、いわゆる「成功」の定義を誤解して捉えている人も少なくないのではありませんか。

上條:そうなんです。私はセミナーの最初に、「成功と書いてありますが、皆さんにお聞きしてみたいと思います。皆さんにとっての成功とは何ですか?」と聞くことがあります。

質問を向けられた人は、あなたにとっての成功とは何か」と聞かれた時に初めて、自分にとっての成功とは何なのだろうかと考えるようです。「あなたにとっての成功とは、隣の方と同じですか?」と聞いてみると、それは違うということに気がつきます。「それぞれが自分にとっての成功を定義して、それを自分でつかむ以外にない。成功とは、そういうものですよね?」というところから私は「7つの習慣」のセミナーを始めています。
そして、「この3日間で意識していただきたいことが一つあります。このセミナーが終わった時に、自分にとっての成功とはこれだ、というものをつかんでください。そうすれば、このセミナーはあなたにとって、とても有意義なものになると思います」と話します。

たとえば、セミナーが始まった時点では、お金持ちになることが自分にとっての成功だと思っている人がいてもいいと思います。問題は、セミナーを受けた後でも本当にそう思うか、です。

竹村:私はセミナーでは成功という言葉はあえて使いません。その代りに使うのが、「effectiveness(効果性)」という言葉ですね。ところが、このeffectivenessがわかりづらいため、どうしても説明が必要です。私たちがずっと言い続けているように、望む結果を得続けている、それが成功の定義ではないでしょうか。

単純に成功というと、マネー&パワーという匂いが強いですよね。上條さんがいまおっしゃったように、望む結果は一人ひとり違いますが、ビジネス・パーソンであろうと、主婦であろうと、子どもであろうと、その時々の望む結果、しかもそれを短期的に得るのではなくて、得続けているというのが効果性の一つの状態であり、それが成功の状態だというふうに私は定義します。それを獲得するための「7つの習慣」だとお伝えしています。

佐藤:日本語では「私的成功」と「公的成功」と訳していますが、英語ではこの成功の部分に「victory(勝利)」という単語を使っていますね。私はこの「victory」という言葉が好きなんです。日本語でも、試合には負けて勝負に勝つ、というような言い方がありますよね。だれだって勝負に勝つことは嬉しい。でも、試合には負けたけれど、課していたことができたから僕らチームとしては勝利なんだ、といった捉え方もできます。ですから、主婦には主婦の、子どもには子どものvictoryがあるわけですよね。世間的には、そんなに大それたsuccessには見えないかもしれないけれど、自分は母親や妻としてこういうことを成し遂げている、あるいはこれだけはずっと守ってきた、というのがその人にとってのvictoryなのでしょう。

上條:私もそうだと思います。そして、先ほど佐藤さんがおっしゃっていたように、「7つの習慣」がチェックリストとして効いてくるわけです。あなたのvictoryは、本当のvictoryかというのを「7つの習慣」でまたチェックを入れていくのですね。たとえば、自分にとっての成功はマネー&パワーだと思っていた人が、「7つの習慣」というビタミン剤と出会ってチェックを入れてみると、アウトプットとして出てきた成功の定義はちょっと違ってくるかもしれませんね。

それは、私的成功という意味でvictoryですね。それでは、公的成功、public victoryはどう考えればいいのでしょうか。

上條:公的成功を考えるうえで大切なことは、「自分だけ勝てばいいのか」、つまり、自分だけが欲しいものを手に入れて、他の人が犠牲になってもいいのか、ということです。「公的成功」とは、自分がただ競争に勝つのではなく、社会や人間関係のなかでも勝利を収めていく道です。

佐藤:自分ひとりではなく、自分たちが得たい、得続けたい価値(あるいは目的)というのがあって、それを得続けていることが公的成功です。ビジネスでも家族でも、自分だけではなくて、「自分たち」にとって得続けたいものがあって、それを得続けていられるのであれば、それはvictoryだと思います。

そこには、どうしても相乗効果が欠かせません。連携、あるいは協力し合っているだけでは1+1の答えは小さなままです。自分たちが得たいものを得続けようとするなら、そこに相乗効果を発生しなければならないでしょう。

竹村:私は、「primary greatness(第一の偉大さ)」と「secondary greatness(第二の偉大さ)」のことを考えていました。タイトルの「成功」という言葉に惹かれて『7つの習慣』を読む。そうすると、そこには「主体性を発揮する」から始まる重要な行動について書かれているわけですが、これをやると成功するんだ、というのが大きな誤解なのだと思います。「7つの習慣」は、研修においても、書籍においても、ベースにあるのは200年間の調査に基づいた基礎的な原則、すなわち人格主義なのです。

この人格主義にフォーカスを当て、より深めているのが「第8の習慣」であり、ここでは人として成長していくという事柄を「第一の偉大さ」と表現しています。マネー&パワーは「第二の偉大さ」。まず、第一の偉大さがあったうえで、第二の偉大さの範疇がついてくる。「7つの習慣」から原理、原則、人格的な要素を抜いて、第二の偉大さを得るための習慣だと捉えるのは大きな間違いです。

あくまでも第一の偉大さの範疇の中での「7つの習慣」という捉え方をすれば、単純にマネー&パワーを得るためにこれだ、という発想には絶対にならないと思います。そこを誤解していらっしゃる方が多いのではないでしょうか。

原則という言葉もまたわかりづらくて、「7つの習慣」のことを7つの原則という人もいます。習慣と原則はどのように違うものですか。

上條:原則は、基本的にはだれでもが知っている、自明的なものと言っていますが、だれも反対しないものです。原則とは何かを考えるとしたら、継続的に何かを手に入れていきたいと思った時に、「何が大切ですか?」と自分に問いかければいいのです。

それが本当に原則なのかどうなのかについて、コヴィー博士は、「そのことを長期にわたって続けていった時に本当にあなたが望む結果が手に入るのか」と考えてくださいと言っています。

また、原則は時代を超えているものですから、江戸時代には別の原則があるわけでもありませんし、場所がアメリカになったら日本とは別の原則が存在するわけでもありません。原理原則は自明的であって、時代を超えている、場所も関係ない、というような説明をまずしています。

佐藤:それに対して、習慣は行動の連続ですよね。たとえば、暴飲暴食の癖や習慣があります、という人がいたとします。それで、暴飲暴食は健康の原則に基づいていますか、と尋ねれば、答えは「ノー」です。その習慣を続けている限り、健康という望む結果は得られませんよね。「習慣化するなら、原則に基づいた行動を続けられるといいですね、そうすれば自分、あるいは自分たちが望むものが得られますよね」ということを付け加えると、上條さんのご説明がもっとよく理解できると思います。

竹村:コヴィー博士は、習慣と原則は文字どおり全然違うものだと言っています。習慣はあくまでも行動を継続していくものです。ただ、「7つの習慣」はすべて原則の上に成り立っているので、それぞれの習慣の下にある原則にも従わないと、その習慣を身につけることはできないのです。

●真剣に取り組めば、必ず変化が現れる、

「7つの習慣」から個人、あるいは組織は、何を得ることができるのでしょうか。「7つの習慣」を習慣化することで、得たいものを得続けていくことができる、あるいは得やすくなる、という解釈でいいのでしょうか。

上條:基本的には組織は人で成り立っているということです。資源であるモノにしても、金にしても、情報にしても、すべて生み出すのは人です。人が関わって組織が動いているとするならば、組織の一人ひとりが、私たちの言うところの「効果性の高い人」をつくり出していかなければ、相乗効果を出すのは難しいでしょう。

組織は相乗効果を出していくために目的を持った集合体だと思います。自立のレベルが低い人たちが集まっている組織で相乗効果を出してくれといっても、それは難しい話です。「7つの習慣」というのは、そこに非常に効いてきます。

これまでの組織は、多くの場合、「アウトサイド・イン」の考え方の下、仕組みや構造や組織の動かし方など、見えている部分を一生懸命に変えて何とか補おうとしてきました。それで結果が出ていた時はそれでよかったかもしれません。ところが今は、どうもそれではビジネスが成り立たなくなってきた、あるいは競争に勝てない時代になってきています。そこで、一人ひとりを効果性の高い個人にどうやってするのだ、と考えた時に、この「7つの習慣」が組織のなかで役立つ。私はそういうふうに思っています。

竹村:「7つの習慣」を導入することによってどうなるかを、いくつかのキーワードを使って説明しましょう。まずは、「ビジネス・パーソンの人間力を高めるもの」であるということ。また、この時代の激流のなかで、一人ひとりが自立をしていく、ということがいろいろな企業でものすごく重要になってきています。さらに、「公的成功を生むためのチームビルディング、Win-Win、シナジー(相乗効果)」ですね。これらはすでに一般的な言葉になってきています。チームビルディングして、Win-Winやシナジーを高めていくものであるというように、「7つの習慣」の効果はすでに一般的な言葉になっていますので、そうした言葉にあわせてご案内しています。

佐藤:お二人のおっしゃるとおりだと思いますね。センスのいい経営者や管理職の方というのは、「7つの習慣」の話に響くんですよね。いままで何となく欲しかったこと、やらなければいけないと漠然と思っていたことが、「7つの習慣」の説明によって明確になると、共通の話題として話すことができます。

竹村:自立や公的成功のプログラムをやっている、という方に、どのようなことをなさっているのですか、と尋ねると、たいていはスキルの研修を取り入れたり、リーダー研修でマインド系のものをやったりしていると答えられます。ただし、結果を出すために行動を強制するもの、変容を促すものはあっても、ものの見方を変える、というところまでは至っていません。

そうした状況を「see-do-get(見る‐する‐得る)」のモデルを使って、「実際に今、起こっているものをトランスフォームしていくことを望むのであれば、行動を変えていくだけでは十分ではなく、私たちのものの見方というところから変えていかなければなりません。それがパラダイム・シフトであり、そのパラダイム・シフトを一つひとつ起こしていかなければなりません」とお話しします。そこまですると、「なるほど。やはり、ものの見方を変えていく必要がありますね」と気づいていただけます。

先行きが不透明な現在、どの企業も今のビジネスモデルや実践をすべて壊してでも、新しいものに取り組んでいかなければなりません。これまでの経験値や前例がまったく通用しない状況のなかにいることを、もっと直視すべきなのです。

私たちが本当の意味でものの見方を変えて、まったく新しいことをやっていくとき、「7つの習慣」以外のものは適用できないのではないかと思います。

上條:「7つの習慣」を、自己変革のプログラムと表現することもできます。企業サイドとしても、どのようにして社員を変えていくのか、いかに自分の仕事をやりがいのあるものと捉え、生き生きと働いてもらうか、ということを考えています。そのためには、ものの捉え方や考え方を変えてほしい、もっと主体的に動ける人材を育てたいわけです。
「7つの習慣」セミナーを受講すると、「こういうふうに考え、こういうことをやったらいいんだ」と、自分を変えるための手立てを得ることができます。パラダイムから行動への落とし込み、その感覚を、研修を通して実感できることが大きいのだろうと思います。

佐藤:そして、研修をやったら終わり、というわけではありません。研修を一、二回やっただけで人のパラダイムが変わるようだったら、私たち講師も苦労しません。経営者の方はもちろん、社内で影響力を持っている人たちが「7つの習慣」をいかに自分のものにしていくか、つまり真剣にコミットしていただくことが必要なのです。「7つの習慣」が血となり肉となる社員をどれだけ増やしていけるか、そこにすべてはかかっていますが、そのためには皆さんに本気で取り組んでもらわなければいけません。それは個人として参加する場合もまったく一緒です。

竹村:はっきりとお約束できるのは、経営者の方々も含めて、参加者の皆さんがそこまでのコミットをもって「7つの習慣」に取り組むのであれば、必ず変わるということです。

●他には代えられない、セミナーならではのディープインパクト

「セミナーを受講して感動した」という方がたくさんいらっしゃいますね。「7つの習慣」といえば、やはりセミナーの受講が第一選択ということになりますか。

上條:セミナーが果たした役割は大きいと思います。本に感動した人もたくさんいらっしゃいますが、本では体験できないものが研修にはありますから。まず、個人で考えさせるというプロセスを踏むこと、それから隣にいる人などとペアで共有するということ、さらにグループでの共有や全体での共有もあります。私は「気づきの連鎖」と呼んでいますが、それが必ず起きるのです。この気づきの連鎖の効果がセミナーではとても大きいと思います。先ほどお話に出た「行動を起こさなければならない時」に際して、この気づきの深さ、気づきに対する決意というものが、行動にものすごく影響を与えると思います。この気づきをいかに深いものにできるか、という点においてはセミナーの効果は計り知れないでしょう。

佐藤:先ほど竹村さんがおっしゃっていたパラダイムが変わる、ものの見方や捉え方が変わるという点でいえば、セミナーは本を読んでいるときよりも、気づきを得やすい演出とかプログラムの工夫がされていますからね。

上條:ビデオ教材がここまで充実しているプログラムはなかなかないでしょう。セミナー中に見る映像から得る気づきもたくさんあると思います。

竹村:「7つの習慣」に限らず、書籍とセミナーの効果を比較した場合、調査結果からも明らかなように、本から学ぶことができる私たちの記憶、それを習慣化していくという部分と、研修に参加し、決意したことを実行するという部分、これは全く結果が違ってきます。

一般的なデータでいうと、本で読んだことが48時間後に記憶に残っている割合は20%なのに対して、話を聞いた場合はだいたい40%、実行した場合で60%といわれています。さらに、「7つの習慣」でも取り入れているシステムですが、「学ぶために教える」、つまり、学んだことを他の人に教えた場合は、およそ80%が残るとされています。このようなデータがありますので、本と研修が違うものであることはたしかでしょう。

セミナーで演習を多く設定している理由は、個人個人が自分のなかで気づきを得ることに重きを置いたプログラム設計をしているからです。また、心にも頭にもインパクトが与えられるようなビデオづくりにも力を入れていて、これは世界でもトップクラスのレベルにあります。

私たちは「7つの習慣」に限らず、土曜日や日曜日に公開コースの研修を開催することが少なくないのですが、それにも理由があります。週末の研修にいらっしゃるのは個人の参加者が多く、ほとんどは自費で参加されています。研修費用以外にも宿泊施設や交通手段にもお金をかけてお越しになる方々ですから、『7つの習慣』の書籍も一回どころか、何十回も読んでおられるような、熱心な参加者です。そんな皆さんが研修に出られて、「なんだ、本と内容が一緒じゃないですか」という反応をされる方は一人もいらっしゃいません。どの方も「素晴らしいセミナーだった」とおっしゃってくださいます。研修でしか得られない気づきや深みが、「7つの習慣」のセミナーにはあるのだと思います。

セミナーを受けるときは、本を読んでから参加したほうがいい、とか、こういう気持ちで参加したほうがいいというのはありますか。

上條:それについては、参加者の方からよく質問されます。『7つの習慣』の本を読んでいただいているに越したことはないです。しかし、本を読んでいなかったら理解が深まらないというわけではありません。特にインハウス(講師派遣コース)では、事前に本を配る会社もありますし、セミナー会場に持っていらっしゃる人もいますが、「この本を最後まで読んだ人は?」と聞くと、ほとんど手が上がらないこともあります。

そのときは、「皆さん、正直ですね。確かにこの本を読もうと思っても、途中で挫折する人は多いですよ。本を読んでいなかったからと言って、いまからお伝えすることがわからないか、あるいは理解が浅くなってしまうことはありません。本を読んだ方には、セミナーによって本の内容を再確認できるという利点が一つあります。読んでいない方は、このセミナーを受けてから読むと、この本の内容をより深く理解できるはずです。ですから、どちらでも大丈夫ですよ」と言います。セミナーを受けてから『7つの習慣』を読むと、とても良い副教材になります。ですから、理解を深めるために、受講後にぜひ読んでいただくといいと思います。

研修に参加しても、理解しやすい人と理解しにくい人はいますか。

上條:それは「7つの習慣」のセミナーに限りませんが、こうでなければダメだ、と自分の考え方が凝り固まっている人よりも、本質的に素直な人、謙虚な方のほうが理解しやすいかもしれません。一般的には、年齢を重ねている方のほうが、考え方が凝り固まる傾向があります。私は知っている、私はできている、私に何を教えるつもりなんだ、とね。自信をお持ちなのはとてもいいことですが、違う考え方があるかもしれない、自分にはまだまだ学べることがあるはずだ、と思える、そういう謙虚さを持っていらっしゃる方は非常に理解するのも早いでしょうね。

佐藤:私も上條さんにまったく同感ですね。その人の学びにプラスになるかマイナスになるかという点も大事なのですが、研修の場では相乗効果も狙っていて、それがいちばんの学びを生みます。残念なことに、素直で謙虚ではない人がいると相乗効果が生まれにくくなります。そういう意味でも、素直で謙虚な人は大歓迎ですね。

竹村:参加者が似たようなタイプだと研修をやりやすいのは確かですが、研修では個人の勉強とは違う相乗効果を狙いたいわけですから、参加者それぞれが持つユニークさも相乗効果に生かしたい、という思いはあります。ですから、ユニークな方も歓迎します。「7つの習慣」に限らず、私たちがプロの講師として、ユニークな方々をどこまで巻き込めるのかも一つのテクニックだと思います。

私が講師として「7つの習慣」の鍵だと思うのは、最初の段階で出てくるパラダイムを学ぶところです。パラダイムのところでは、あなたが知っているものはそれが正しいとは限らないというメッセージをかなり強く送りますよね。心が頑なな方でも、それに気づいていただけるようなメッセージをあえて強く送るところから始めます。あとは休憩時間など、研修以外のものも通して、講師と参加者の信頼関係の部分になってきます。

上條:はじめは抵抗している人の方が、むしろ変化は大きくて驚きます。

竹村:三日間も一緒にいると、同じ釜の飯を食ったような感じになりますよね。

佐藤:パラダイムが変わり、最終的に素直で謙虚になり、竹村さんがおっしゃるようなもともと持っているユニークな面がチームに貢献してくれると、とても大きな相乗効果を生みますね。相乗効果にユニークさは欠かせませんから。

●絶好の受講タイミング、それは「今」かもしれない

キャリア的な意味で、「7つの習慣」はどんなタイミングで受講するのがベストなのでしょうか。

竹村:年配の方からは、「もっと早く受けておけばよかった」という声をよく聞きます。やはり、早ければそれに越したことはないと思います。

上條:組織の場合、どういった層に対して「7つの習慣」を導入するかは、人事の考え方によると思います。「どのくらいの年齢から導入したら効果的ですか?」とよく聞かれますが、それに対しては「小学校四年生からやっていますよ」とお答えしています。

佐藤:人事部の方は、どうしてもマスでアプローチしたがる傾向が強いと思います。「この階層に対してこの着地点に持っていきたい」という考えがあって、マトリックスのなかでまとめて対応しようとする。また、「この集団がこのレベルに移動すれば、自分の仕事はOK」というふうに考えてしまうケースもあるようです。

先日、とてもセンスの鋭い社長さんとお話しした時に、「多くの社員に対して一斉にこの研修を行うのはとても無理ですから、インフルエンサー、つまり影響を及ぼせる人をピックアップして、その方たちにまずコミットしてもらい『7つの習慣』を実際に使ってもらえば、効果的に影響力を発揮できますし、時間とコストという意味でも効果的だと思います」と提案したら、いたく納得して下さり、即座に「そういう人材開発戦略で行こう!」ということになりました。

結局は「何をやりたいか」というところで、自分の哲学をお持ちの経営者とそうではない経営者、あるいはまだ気がついていらっしゃらない経営者では、発想にも行動にも大きな違いが出ることを実感しました。

社長さん自ら参加されるケースもあるのですか。

上條:ええ、人事部門がお願いしていないのに、「俺は出るよ」とトップの方がおっしゃるケースは少なくありません。日ごろから「7つの習慣」を評価されていて、ぜひ全社でやりたい、だから自分も出る、という発想です。

佐藤:そういうトップの方が最近増えていますよね。感動します。この会社は絶対に変わるという予感を覚えます。それは「7つの習慣」を贔屓にしてもらっているからという訳ではなくて、先ほど申し上げたセンスの有無の問題なんです。センサーの感度がいい経営者の方とお話ししていると、「社長さん、よくおわかりで」と、いつも思います。その組織は絶対に変わります。また、そういう社長さんがリーダーをされている会社は、もともとのレベルも高いですね。

●「7つの習慣」をビジネスに活用するためのヒント集

「7つの習慣」をビジネスにどのように活用すれば効果的なのでしょう。何かヒントがあれば、ぜひ教えてください。

上條:セミナーのなかでは、それぞれが自分の立場、自分のやっていることに重ねながら聞いたり考えたりしてください、とお願いしながら研修を進めます。しいて言うならば、職場に戻ってすぐに実行できるのは第三の習慣でしょうね。皆さん時間に追われているようですから。実際に手帳(フランクリン・プランナー)を使っていただいて、自分の時間管理をもう一度、組み立て直すという方法をお勧めしています。プランナーというツールを上手に使えば、第二の習慣にある「ミッション」を毎回振り返ることになりますし、いかに主体性を発揮して自分にとって重要なことを行うか、その実践につながりやすいようになっています。

ただし、受講後6ヶ月経った方へのフォロー研修で、「どの習慣がいちばん難しかったですか?」とお尋ねすると、たいてい第三の習慣が難しかったという答えが最初に出てきます。理屈はわかっても、行動を習慣化するのはなかなか難しく、日々の生活のなかでさまざまなことが発生して、自分が思っているようには時間をコントロールできない、ということのようです。

竹村:人間関係のレベルと個人レベル、それぞれのヒントをお伝えしたいと思います。

まず、人間関係のことについては、お互いにサポートし合い、コミットメントを伝え合い、まず学ぶために教えることを行い、そうやって他の人の体験をサポートし合うことをぜひ行っていただきたいと思います。

個人のことに関しては、まずできるだけ「7つの習慣」用語を使うようにするということです。学習するということは単語を学ぶことだといわれていますが、私もそう思います。3日間の研修や書籍のなかで、多くの「7つの習慣」用語を学びますが、セミナー後に単語を使うことは、そのコンテンツを使っていくことにつながります。その単語は、「第Ⅱ領域」かもしれないし、「刃を研ぐ」や「Win-Win」かもしれませんが、そういう単語をできるだけ使っていくことです。それがチームになると、「第Ⅱ領域活動」のような単語をチームで使えるようになり、組織や会社の文化に結びついていきます。

個人の話に戻りますが、『7つの習慣のティーンズ』という書籍には、学んだことを活用する行動を「最初の一歩」として紹介しています。すべての習慣で、とりあえず最初の一歩を踏み出す。それがたとえ小さなことであれ、自分との約束を守るということです。第三の習慣の「最初の一歩」として、著者のショーンはいろいろなものを薦めていますが、私は1日の1%である15分を最初の一歩として始めることをおすすめします。1日15分ならできるかもしれないと思う方は多いようです。「第Ⅱ領域は大切なので、明日から1日の80%を第Ⅱ領域に費やしてください」ということではなく、まずは1%からやってみます。

さらに、どんな小さなことであれ、自分との約束をきちんと守っていくことができたら、もっと大きな事柄を果たしていくことができるようになります。そんなスパイラルができたら、「7つの習慣」に生きていくということをもっと広げていくことができると思います。

佐藤:小さなことですが、メモをするというのは大事なことです。学校の授業ではありませんから、スライドに出ていることを書き写すようなことはしないで、自分が何かに気がついたことをメモするように話します。「こういうことだったのか」とか「だから自分はいままでうまくいかなかったんだ」とか「こうすればもっとうまくできるんだ」といった気づいたことがあれば、どんどんメモしてください、と私は伝えています。何かに気がついたとき、それがまさにパラダイムが変わる瞬間なんです。

研修が終わってからも、気づきのあるたびに繰り返しメモできるようになると、学んだコンテンツと日常生活を紐づけできるようになります。そうなれば「7つの習慣」の使い方が自然にわかるようになるはずです。

そして、竹村さんがおっしゃったように、「7つの習慣」用語を意識して使うようにすると、紐づける磁石のようなパワーが強くなると思います。「知的創造」といった単語を繰り返し言っていると、「何となく会議に出ようとしていて、知的創造をやっていなかった」というふうに紐づけられるようになります。

上條:できることならば、気がついたこと、考え直したことを人に伝えられるといいですね。どのような場面で、どのようなことに気がついたかを学んだ仲間同士が共有すると、お互いがさらに学ぶことができます。

研修で多くのことを気づいても、日常の仕事に戻ったとたん、またいつものスタイルに戻ってしまう人も多いと思うのですが。

上條:研修で学んだことを自分に定着させるために、手帳を使うとか、メモをとるとか、何か工夫が必要であることはたしかです。それは自分で意識する工夫です。やろうと思っていることを忘れない工夫、何かあった時にそれを思い出せる工夫などで、その人にいちばんフィットしたやり方があると思います。

私たちの提案は、やはり手帳を活用することですよね。この手帳と使い方が合わない方は当然いらっしゃると思いますが、チャレンジしてほしいと思います。もう一つは、繰り返しになりますが、学んだことを共有するネットワーク作りはお勧めしたいです。こういうことに気づいて、こういうふうに行動してみたということを、自分のなかにとどめておくのではなくて、みんなに発信して、また、それを受けた人は、ただ読むのではなく、自分もこういうことに気づいたという内容をお返しするといいと思います。

竹村:まず取りかかるべきは、やはり第一の習慣の「主体性を発揮する」だと思います。「7つの習慣」に取り組むためには、「自分自身が主体的になる」というマインドセットがなければできません。職場には刺激がたくさんあります。その刺激に対してどのようにスペースを広げ、自分がどのような反応を選択するのか。それが「7つの習慣」的選択であり、「7つの習慣」を生きるということだと思います。やはり、そういうマインドセットがあったうえで、いろいろなツールやコミュニティがあるのだという気がしています。

●効果性を発揮したいと願う皆さんへのメッセージ

この閉塞感の中、今すぐには個人の力ではどうすることもできない状況もあると思いますが、そういう状況のある人たちに対して、「7つの習慣」からのメッセージをお願いします。

上條:「何をやっても無理」「この組織の中でものを言っても何も通らない」など、諦めの境地にいる人たちばかりの組織に対して「7つの習慣」研修を行うことがあります。

そういうとき、私はまず「皆さん、この組織に入ったときのことをもう一回思い出してください。何をやろうと思ってここに入ったのですか? ここで何を成し遂げたいと思いますか? そして、ここには皆さんにしかできないことがあるのではないですか? 皆さんが担っているものが必ずあるはずですから、もう一度それを考えてほしいのです」と、お話しします。さらに、「何に貢献したいのかがわからずに、その仕事をするのは難しくないですか?」と続けます。

コヴィー博士が、「7つの習慣」のなかでいちばん効くのは第二の習慣とおっしゃるように、人の持つ志に戻っていかないと、自覚することも難しいのです。自分がいまどのような状態に置かれているのか、それから、その方向にいったらどうなるのだろうかと想像することも難しい。そして、自分本来の志に向かおうとする自由意志を発揮することも難しくなります。

最後に「ここで何に貢献したいのか。それが見えれば、あなたが今、何をすべきか、これからの10年をどう過ごしたらいいのか、それを解いていくヒントが見つかります。だから諦めないでください。あなたにしかできないことが必ずあります。そう考えてください」、そう言って終わることにしています。

そうした「他責」的な考えの人は少なくないと思いますが、どのように対応されますか。

上條:そういう人たちに第一の習慣の「天気を持つ」というビデオを見てもらうと、最初は総反発です。それに対しては、「おっしゃるとおりですね」と最初は認めます。「皆さんがそう感じるのも本当によくわかります、それは無理ありませんね、冗談じゃないと思いますよね」と講師として認めます。でも、ちょっと冷静になってここで何を言っているか皆さんで考えてみましょう、というところから少しずつ紐解いていって、おもしろくない、つまらないというのは自分で決めていることですよね、とお話しします。ほとんどの人はもともと優秀な人たちですから、ほとんどの人は私が何を言いたいのか理解してくれます。気持ちは抵抗していても、頭ではわかっているのです。

竹村:刺激と反応の間にある4つの力をもう少し詳しく説明しますと、人間にしか備わっていない4つの力を思い起こしていただければ、奮起するパワーが出てくるのではないでしょうか。

また、「7つの習慣」の重要なキーワードに「リーダーシップ」があります。リーダーシップとは何か、ということについて、コヴィー博士はいろいろなフレーズで語っていますが、そのなかで最も端的なものが「Leadership is your choice」だと思います。すべては、私たち自身の選択なのです。

最後に、長年、講師を続けておられる皆さんにとって、「7つの習慣」の魅力とは何なのでしょう。

上條:私にとっては、自分自身の人生を変えたのが「7つの習慣」です。「7つの習慣」は私の人生そのものになりつつありますが、完璧に実践しているかというと、そうではありませんし、私にはとてもできないと思います。しかし、私のバックボーンから「7つの習慣」を取り除いたら、もう自分ではないと思えるほど、私のなかで大きな存在感があります。ですから、「7つの習慣」とは、自分自身を支えている大きな柱をつくってくれたものと言えるでしょう。

私はセミナーのなかでこう言っています。「定年になるまで7つの習慣と共に生きてみて、本当にそうだと確証できるものがいくつかある。だから私は自信を持って言います。やってみてわかったことですから、それをお伝えします」と。

竹村:私の場合は、「第8の習慣」を通して感じたことですが、一番の鍵となるのは、人に与えられている三つの天賦の才だと思います。まず、人々には「選択の自由」があること、そして、自明の「原理原則」、最後に「4つのインテリジェンス」です。

「7つの習慣」は、一般的に今よくいわれている人間力とか人格主義など、人が人としてあるべき姿に導いていってくれるものだと思います。人としてあるべき姿というのは、その人の力、その人のなかに内在している固有の姿だと思います。つまり、望む結果だとか、何を手に入れたいかというようなことではなくて、本来、その人のなかにあるものが、あるようになること。その形成を手伝ってくれるのが「7つの習慣」だと、最近はそんなふうに思い始めています。

佐藤:私も同感です。人は自分以外の人を変えたいと願いがちですが、それは不可能です。しかし、人を変えることはできないけれど、人は変わることができる。「7つの習慣」というのは、人が変わることができるツールなんです。自ら気づきを得て、自分自身が変わろうと思える、我々が知る限り、唯一最強のツール。それが「7つの習慣」だと思います。

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