今社会のあらゆるところで、信頼関係の崩壊が叫ばれています。企業不祥事によるブランドの失墜はもとより、本来私たちの社会は信頼関係で成り立ってきたにもかかわらず、政治、教育、企業、家族など、その範囲はとどまるとこを知りません。こうした信頼関係の崩壊は、様々なひずみをもたらしています。
仕事上のプロジェクトやイニシアチブ、コミュニケーション、戦略的/戦術的任務など、私たちが成し遂げようとする活動はみな、信頼の程度に よって良くもなれば、悪くもなります。信頼によってパフォーマンスが何倍にも拡大していれば、それはいわゆる「信頼の配当」を受けている組織です。それに対して、何をするにも時間とコストが余計にかかり、品質や効率が低下し、そのツケが最終的に顧客に回される、そういう組織は「信頼税」を払っているといえます。コロンビア・ビジネススクールのジョン・ホイットニー教授は、「不信はビジネスを営むコストを倍増させる」と述べています。
組織内において信頼レベルがもたらす経済的インパクト(信頼効果):「信頼」が「税金」または「配当」として財務諸表に表示されたら素晴らしいと思いませんか。そうしたら組織はきっと、税金をなくし、配当を増やすことに資源を使うようになるでしょう。実際、信頼関係の強い文化であるか否かは 財務諸表には表われませんが、下表に挙げたような形で具現化されます。いずれも目に見え、測定可能であり、しかも経済的にも重要なものです(これらすべてが、強力な「信頼の重要性を裏付ける根拠」となります)。組織が支払う7つの税金の逆が配当になります。
| 低信頼組織が支払う7つの税金 |
高信頼組織が受け取る7つの配当 |
| 無用な重複 |
価値の増加 |
| 官僚主義 |
成長の加速 |
| 権力争い |
イノベーションの促進 |
| 参加放棄 |
協調関係の改善 |
| 離職 |
提携の強化 |
| 離反 |
実行力の改善 |
| 不正行為 |
忠誠心の強化 |
社内の権力争いに関係する間接費は控えめに見ても年間1,000億ドルと見積もられ、これよりはるかに大きな額を推定する人も少なくありません。
ギャラップ社は米国一国の参加放棄のコストを、年間2,500〜3,000億ドルと見積もっています。さらに経営サイドを信頼している割合を見ると、職務に熱心な社員の間では96%に達するが、意図的に参加放棄している社員では46%にすぎません。
組織が望まない離職は高くつきます。退職者の補充を行なうとなると、その人の年間給与の平均1.5〜2倍のコストがかかるといいます。
顧客の離反に関する調査によれば、新規顧客を獲得するコストは既存顧客の維持より桁違いに多く、5倍という推定もあるほどです。
2004年に実施された調査では、平均的な米国の企業は何らかの不正行為が原因で年間売上高の6%を失ったと推定されています。
信頼は価値を高めるという点に関して、データの持つ説得力には逆らいがたいものがあります。ワトソン・ワイアットによる2002年の調査で は、株主への株価と配当の合計で、高信頼組織は低信頼組織を286%上回りました。さらに、ラッセル・インベストメント・グループの2005年の調査によれば、フォーチュン誌の「米国で働きたい会社ベスト100」(信頼の要素が判定基準の60%を占める)に選ばれた企業は、それまでの7年間で市場平均の4倍を超えるリターンを得ています。
調査結果から明らかなように、顧客は信頼できる会社や社員からより多く、より頻繁に購入し、周囲にも推薦し、長期にわたって取引を続けます。さらに、そうした企業はコスト面でも優れています。
主要な利害関係者から得る忠誠心でも、高信頼企業は低信頼企業をはるかにしのいでいます。それぞれの関係について、以下のデータがそれを明確に裏付けています。
- 経営コンサルティング会社、ワトソン・ワイアットによる2002年の調査では、高信頼組織では株主への配当が低信頼組織の3倍近いという結果が出ている。
- ラッセル・インベストメント・グループの2005年の調査によれば、フォーチュン誌の「米国で働きたい会社ベスト100」(信頼の要素が判定基準の60%を占める)に選ばれた企業は、それまでの7年間で市場平均の4倍を超えるリターンを得ている。同誌はこう明言している。「社員は自分がベストと考える方法で仕事ができる自由を重視し、優秀な雇い主は彼らを信頼する」
- スタンフォード大学のトニー・ブリック教授の教育調査によれば、高い信頼を得ている学校は低い信頼の学校に比べ、試験の得点が伸びる可能性が3倍を超えている。
- 英国のウォリック・ビジネススクールが実施した調査によると、厳格な取り決めや罰則よりも信頼に基づいて管理される外注契約は、双方に高信頼配当(契約額全体の約40%)をもたらす可能性が高いという。
- 経営陣を信頼しているのは社員のわずか51%である。
- 「自分のような人」に対する信頼が、2004~2006年の期間に20%から68%へと3倍に拡大した。会社、引いては製品に関する情報源としては、「彼らのような人」に対する信頼が未だに最も厚い(2007年11月のエデルマン・トラスト・バロメータ)。
- 非合法または非倫理的な行為を過去1年間に目撃した社員は76%にのぼる。
- リーダーの行動に誠実さを感じるのは、社員の36%にとどまる。
- 経営サイドを信頼している割合を見ると、職務に熱心な社員の間では96%に達するが、参加放棄している社員では46%にすぎない。昔からよく言われるように、「ニワトリ(不信)が先か卵(参加放棄)が先か」ということだ。これは自己増殖的サイクルであり、組織の勢いを徐々に奪い、やがては完全に停止させてしまう。
- ハーバード大学ジョン・F・ケネディ行政・政治学大学院が2007年後半に行なった調査によれば、米国人の77%が自分たちのリーダーを信頼していない。
- 再作業や再設計は状況によって、低信頼行動が生じさせる重複コストとみなされる。ソフトウエア開発では、経費の何と30~50%が再作業に起因する場合がある。また、製造業では再加工費が元々の製造費を超えることも珍しくない。
- 政府、医療、教育、非営利、ビジネスなど、あらゆるタイプの組織において官僚主義のコストは半端ではない。2004年に発表されたある予測によれば、米国で連邦法規に従うコストは1兆1千億ドルにのぼり、これはGDPの10%を超える額である。
- ドイツではアンゲラ・メルケル首相が、中堅企業の売り上げの4~6%が官僚的手続きの順守に費やされていると述べている。
- 2003年における米国の医療制度のコストは3,990億ドルで、仮に無保険者全員に医療を提供した場合のコストをはるかにしのぐ。低い信頼は官僚主義をはびこらせ、官僚主義は低い信頼をはびこらせる。つまり、低い信頼しかない組織では官僚主義が蔓延するのである。
- 社内の権力争いは、情報の抱え込み、内輪もめ、情勢分析、隠された思惑による動き、部門間の対立、陰口、後会議などの行動を生み出す。こうした行動は、ありとあらゆる時間、才能、活力、資金を浪費させる。さらに、会社の文化を汚し、戦略を狂わせ、率先的努力、人間関係、キャリアを妨害する。社内の権力争いに関係する間接費は年間1,000億ドルと見積もられ、一部ではこれよりはるかに大きな額も推定されている。
- 組織が望まない離職は高くつく。退職者の補充を行なうとなると、その人の年間給与の平均1.5倍から2倍のコストがかかるという。
- 社員というのは、自分が会社から受けている扱いを顧客に向ける傾向がある。だからこそ、サウスウエスト航空のコリン・バレット社長兼COOは言うのだ。「社内的にも社外的にも、我々はまったく同じ考え方で顧客サービスに取り組んでいます。社員について話すときも乗客について話すときも、『信頼』という言葉の重みは何ら変わりません」顧客の離反に関する調査によれば、新規顧客を獲得するコストは既存顧客を維持するコストより桁違いに多く、5倍という推定もあるほとだ。
- 米国公認不正検査士協会が2004年に実施した調査では、平均的な米国の企業は何らかの不正行為が原因で年間売上高の6%を失ったと推定している。エンロンのケースでは、不正行為税の税率が最終的に100%に達し、会社を沈没させた。同協会はまた、インサイダー不正の額が平均で収益の7%に相当し、これにより米国の雇い主は今年、約9,940億ドルを失うことになるとも指摘している。
- フランクリン・コヴィーの実行指数(Execution Quotient)ツールである「xQ」は、組織の高い実行力と強い信頼の間に強い相関関係が存在することを一貫して示している。食料品店を対象として2006年に実施した調査によると、最も実行力に富む店はそうでない店に比べ、測定したあらゆる分野で信頼レベルがきわめて高かった。
- ゴリンハリス社の2003年の調査では、次のような結果が出ている。
- ある企業と取引を開始したり取引量を増やしたりするのは、その会社を信頼しているためだとする回答が39%を占める。
- 取引を停止または縮小したり、競合他社に乗り換えたりするのは、その会社の信頼性に懸念が生じた場合だとする回答が53%を占めた。
- 信頼している会社については疑念が生じても好意的に解釈し、企業行動について見解を求める前に会社側の説明に耳を傾けたいとする回答が83%を占めた。
- 2006年エデルマン・信頼バロメータ(信頼度調査)は次のように指摘している。「信頼はボーナス以上のものである。構築し、維持し、さらに高めなければならない有形資産である。信頼が企業に利益をもたらすように、不信または信頼の失墜は損失をもたらす。調査対象国のオピニオン・リーダーの少なくとも64%が、信頼していない会社の製品やサービスは購入しなかったと回答している」また、そうした会社については大部分の人が批判(悪い口コミ)を他者に伝え、取引や投資を拒んでおり、約半数がそうした会社で働くことを拒否している。
- パーソネル・トゥデイ誌の調査において、社員の信頼を得ることが重要であり、それが旺盛な参加意識の鍵になると指摘された。
- タワーズ・ペリン・レポートは、社員の積極的参加を引き出す第1の要因は経営陣が彼らの福利厚生に真剣に取り組むこと(意図、他者を尊重する)であると指摘した。また、経営者の行動も社員の参加意識に大きく関係し、「正直かつ誠実な行動」が第2の要因だという。
- 今年発表されたヒューイット調査において、社員の参加意識と雇用主上位50の間に直接的な相関関係があることが示された。最高クラスの雇用主では、参加意識の強い社員の比率も78%に達している(平均値は57%)。
- 雇用主上位50は、その85%が優秀な人材を獲得している(平均値は68%)。
- 参加意識の非常に強い社員の場合、その66%は現在の職場を去る意志がないのに対し、参加意識の弱い社員では、その比率は12%に低下する。
- 社員の参加意識が弱い会社は、売上原価が業界平均より4%高いのに対して、参加意識の強い会社は2%低い。社員の参加意識が高い組織は基本的に、離職率、売り上げ、収益、成長、売上原価、人材獲得などで業界平均を上回っている。