導入事例・レポート
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太陽油脂株式会社「4Dxプロセス」導入事例

2015.2.4

業務用の食用加工油脂メーカーであり、また、戦前より『太陽の恵み』から得られる素材にこだわり、『人と地球にやさしい』石けんやシャンプー、基礎化粧品等を作り続け、そして最近ではオーガニック・スキンケアメーカーとしても注目を集める、横浜の太陽油脂株式会社
社内に一歩足を踏み入れると、取引先の大企業からの賞状や盾が並び、業務範囲の広さに驚かされます。同社では「工程トラブル・不適合品の削減」「労働災害ゼロ」「生産性UP」の3つを年間の最重要目標として「4Dxプロセス」を導入しました。今回はその導入目的や、実際に運営してみた効果、工夫・苦労した点などを現場の方々を中心にお伺いしました。

“4Dx”とは、“The 4 Disciplines of Execution”の略称で、「実行の4つの規律」を意味します。それは、日々絶え間なく続く多忙な業務の中にありながらも、組織・チームが遂行すべき重要戦略を明確に捉え、フォーカスし、実行するための4つのルールです。

  • 第1の規律:最重要目標にフォーカスする
  • 第2の規律:先行指標に基づいて行動する
  • 第3の規律:行動を促すスコアボードをつける
  • 第4の規律:アカウンタビリティのリズムを生み出す

「4Dxプロセス」は、これら4つの規律を組織・チームに導入し、掲げた目標を達成するために、数か月間に渡り継続的に取り組むトレーニングとプロセスコンサルティングです。フランクリン・コヴィーのコンサルタントが介入し、エグゼクティブやマネージャーとともに重要戦略の策定からそれらを推進するためのリーダーの育成、またチームメンバーにも「実行」文化を根付かせていきます。

常務取締役 工場長
青木 亮一 氏
生産技術部
環境・安全・モノづくり課
主任 倉内 賢一 氏
製造一部 製造管理課
兼 業務システム部
初見 陽介 氏

ある書籍との出会いが「4Dxプロセス」導入のきっかけに

(青木氏)当社の前社長から、面白い本だから読んでみるようにと手渡されたのが、『戦略を、実行できる組織、実行できない組織。』(キングベアー出版)で、これが「4Dxプロセス」との最初の出会いでした。この本を読み、「確かに今までは結果だけで評価をしていたかもしれない。プランや目標を決めることと、その結果を評価するだけで、この間のプロセスには目を向けていなかった」と気が付いたのです。言われてみたら、一方的に目標を与えられて結果を出せと求められても、実行する立場ではなかなか難しいですよね。本を読んでいてそこに気付き、実行するためのプロセスを重視している点に興味を持ちました。

当社が抱えていた課題の本質に働きかけるソリューションが「4Dxプロセス」

(青木氏)当時抱えていた一番の課題は、まさに「どうしたら実行できる組織になれるのか」ということでした。経営側や管理職側が大きな目標を立ててそれを伝えたところで、実際に現場で実行できなければ何の意味もありません。本当に「実行できる組織」になるためには、一人ひとりが自立(=自律)し、自分で考えて行動できる人間でなくてはならないはずです。どうしたら一人ひとりが自ら実行できる組織になるのか、というのが一番の課題でした。

工場と品質保証部の2部門(21チーム、約130名)で「4Dxプロセス」を実施

(青木氏)「4Dxプロセス」を導入したのは工場と品質保証部の2部門です。2部門で計21の小集団活動チームが存在するので、その21チームで「4Dxプロセス」を実施しました。その小集団活動チームと彼らの上司を合せて130人程度で実践しています。
私はチャンピオン(「4Dxプロセス」における統括責任者・オーナーの意味)として、工場全体のWIG(“Wildly Important Goal”の略称で「最重要目標」の意味)を決定する役割を担いました。そして倉内がチャンピオンと現場のチームリーダー達の間に入り、フォローをするコーチ、初見には小集団活動チームのリーダーとして取り組んでもらいました。全部で21チームありましたので、他にも数名のコーチと多くのチームリーダーがいました。私が工場の上位に設定したWIGを、彼らがそれぞれのチームに合うようにブレイクダウンし実行してくれたのです。

「4Dxプロセス」を実施する上で与えられる役割

チャンピオン 組織全体の目標を掲げ、「4Dxプロセス」を実施していく上での全体の統括責任者・オーナー。
コーチ 各チームリーダーやそのメンバーが実際に「4Dxプロセス」を効果的に運用できているかをサポートするコーチ役。
チームリーダー
(マネージャー)
組織全体の目標からブレイクダウンされた自チームの目標達成へ向け、チームメンバーを巻き込み推進するリーダー。

各部門・各チームが納得し、心から決意できる最重要目標と先行指標を

(青木氏:チャンピオン)プロセス導入前のコンサルティングを受けた際に、私が中心となって工場全体のWIGを3つ決めることができました。それは「工程トラブル・不適合品の削減」「労働災害ゼロ」「生産性UP」といった、大枠のテーマです。その後、チームごとにそのWIGをブレイクダウンし、実現するための先行指標(WIGを達成する為のチームのアクションを指標化したもの)を決めてもらいました。実際にそれを現場でどう実行するのか、そもそもその先行指標は機能するのか、などのチェックを行いましたが、その作業が一番大変だったと思います。チームによっては自分たちが大変にならないように簡単な指標を設定してくるケースもあったので、それを私たちの方で正さなければならなかったり、そもそもWIGと先行指標の理解や共通認識さえずれてしまっている状況もありました。

(倉内氏:コーチ)私はコーチとして各チームのリーダーやメンバーをサポートする役目でしたが、最初はとにかく各チームのばらつきが大きい印象がありました。どんどん前向きに、独自のアイデアを出しながら進めるチームと、少しでも楽な目標や先行指標を設定しようとするチームなど、様々でした。それを一定レベルまで持ってくるのも大変でしたが、そもそも私が口を出し過ぎては今までと何も変わりません。そこで、あまり口を出さずに各チームに考えてもらうよう任せましたが、「明らかにおかしいな」と思いながら口を出さないのもまた難しかったですね。
また、チームメンバーへ「4Dx」の考え方を共有する際には、ワークセッションで使用した教材や資料だけではなく、理解を促進するために言葉を柔らかくしたり、関連する情報を加えたりしながら「WIGや先行指標とはこういうものだ」ということをメンバーに説明するところからスタートしました。皆で相談をしながら、「工程トラブル・不適合品の削減」「労働災害ゼロ」「生産性UP」といった大きなWIGを各チームの具体的な目標や先行指標に落とし込みましたが、その作業は予想以上に大変でした。「何をしたら先行指標が機能するのか」と徹底的に話し合いましたが、指標をブレイクダウンしすぎると、チームのアクションなのか個人のアクションなのかも分からなくなってしまいます。そもそも今まで「先行指標」という概念が無かったので、皆が納得して染み込ませるのに苦労しましたね。

チームで取り組んでこそ意義あるスコアボードが作成できた

(倉内氏:コーチ)スコアボード(WIGと先行指標の進捗がシンプルにビジュアル化されたもの)の作成は「4Dxプロセス」を実施する際にとても重要ですが、最初は皆、「先行指標」って何?というレベルだったため、スコアボードの作成も苦戦していました。しかしその中でも2チームほど、見本となるような先行指標とスコアボードを出しているチームがありました。他のチームのメンバーもそれを見て「そうか、先行指標とはこういうものか」ということが具体的に分かったと思います。リーダーがメンバーに相談もせずに、勝手に先行指標やスコアボードを作っているところもあったため、「チーム全体でよく話し合って、皆で楽しみながらスコアボードを作っていこう」ということを伝えました。その結果、それぞれがとても工夫をこらし、はしごを登っていくイメージのスコアボードだったり、ゲーム風にしてスコアを競うスコアボードがあったりと、各チームが楽しみながら作ったというのが私たちにも伝わってきましたね。

実行の「視える化」でWIGセッションの雰囲気が変わった

(初見氏:チームリーダー)最初の頃はWIGセッション(チームに実行のリズムを創り出すために毎週チーム毎で行う4Dxの報告会)の正しい進め方が分からず、私ひとりがしゃべって仕切って、と司会のようになってしまい、進めながら「これではいけない」と感じました。そこで、各メンバーが来週までにやるべきこと、他のメンバーに伝えることをWIGセッションの中で明確にし、その実行度合がしっかりと皆の目に見える形をとりました。個々のメンバーが自分の役割を認識し、責任感が芽生え積極的になり、週に一度きりのたった15分のセッションですが、雰囲気ががらりと変わっていきました。これが大きな分岐点だったと思います。具体的にWIGセッションで行ったのは「指標を動かすためにこの一週間でやったこと」「前回問題となった部分をどう変えたか」の発表です。先週課題として挙げていたことをきちんと解決できた、まだこの部分が難しい、といった細かい情報を共有することで、皆が一丸となったと思います。

改善提案が月間380件と飛躍的に増えるなど、他部署へも波及効果が

(倉内氏:コーチ)私のチームでは大きな効果が出ました。今まで毎月100件に満たなかった改善提案が、350件とか、翌月は380件とか!内心では200件くらいに達すれば良いなぁと考えていたので、この効果に私自身もチームのメンバーも驚いています。こういった目に見える数字だけではなく、各メンバーに色々な気付きがあったことも収穫でした。「この作業って、過去からの慣例で続けているけど、本当に必要?」「こういった方法のほうが効率アップするのでは?」と、今まで当たり前にやっていた非効率的な事にも気付くようになったのです。それは単なる「生産性UP」という事実だけではなく、個人個人が業務に責任を持ち、疑問を持って改善点を提案してきた、という素晴らしい効果だと思います。

(初見氏:チームリーダー)最初にチームリーダーとしてワークセッションに参加した時の正直な感想は「何のためにこんなことをやるのだろう?」というものでした。日々多くの業務を行っている上にさらに新しい業務が増えるので、導入当初はマイナスイメージを持つ人も少なくなかったと思います。セッション後に私も本を読み、よりイメージを持ちながら臨んだので、話を聞いているうちに段々と自分のチームのための具体的なビジョンが浮かんできました。そしてさらにセッションを重ねるうちに「自分にもできそう」「面白そう」と自分自身が変わっていくのを感じました。私自身はともかく実際のメンバーが「やらされ感」を持つと、成功しないことが目に見えて分かってきたので、「こういった目的のために行う」「他部署でこんな効果が出ている」という風に、目的の共有はもちろん、メンバーにとってもプラスになるのだ、ということをきちんと言葉で伝え続けることを大切にしました。その過程があったからこそ、大きな成果に結びついたのだと思います。

一人ひとりの主体性が「実行できる組織」を創り上げる

(青木氏:チャンピオン)「4Dxプロセス」を導入した一番大きな目的は「計画を実行できる組織作り・従業員一人ひとりの自立(自律)」です。「生産性UP」などは単なる結果に過ぎず、大切なのはそのプロセスです。「4Dxプロセス」を手段として、一人ひとりが「こうしたら実行できるのか」と気付いたり、「自分にもできた!」という自信をつけてくれると良いなぁと思っています。この経験が積み重なれば自ら動くようになるでしょう。そして、そういった個人の集まりが「実行できる組織」を作るはずです。まだ導入して間もないのですが、結果は少しずつ出始めています。リーダー側もプロセスをきちんと見ることの重要性を知り、各メンバーも具体的に動くとはどういうことか、が少しずつ見えてきたと思います。

(倉内氏:コーチ)今の段階ではまだまだですが、いずれは工場長が申し上げたように、個人個人が「自分で動く」ようになるのではないか、と感じています。私自身の気付きで言うと、今まではメンバーの個人目標を立ててその結果を見るだけで、プロセスを見ようという発想がありませんでした。コミュニケーションをとる機会も以前よりずっと増え、これはお互いに大きな収穫だと思います。

(初見氏:チームリーダー)最初はメンバーからも「忙しいのに」とか「本当に効果があるのか」といった不平不満が多く出ましたが、自分たちでも効果を感じたり、他のチームの変化を目の当たりにしたりするうちに、どんどん自発的に意見が出てくるようになりました。「今週の課題を終えたので、来週分を前倒しでやっても良いですか?」という質問をもらった時は嬉しかったですね。毎週一回のWIGセッションは今後も続けていこうと思います。

最重要目標の達成と更なる実行力向上へ向けた今後の展望

(青木氏:チャンピオン)導入に当たって、今回は初めてということもあり、ずいぶんと細かいところまで私が口を出してしまいました。今後は、私の関わりはビジョンの決定などの根本的な部分にとどめ、ボトムアップしてきた意見を会社の方針とすり合わせていく役割を担いたいと思います。

(倉内氏:コーチ)コーチとしては、今回、初見さんのグループが出したような成果を他のチームでも出せるよう支援していきたいです。自分のチームとしての最大の目標は「安全第一」なので、それを実行するためにさらにどんな工夫があるか、チーム内でもっと話し合っていこうと思います。

(初見氏:チームリーダー)これからも引き続き「4Dxプロセス」を使って、「製造管理課」の理想的な仕事の仕方を模索していきたいと思います。今回私のチームでは、一時スコアボードがうまく機能しなくなってしまった時期がありました。こういった経験も糧にしながら、次回は、より効果的なスコアボードについてメンバーと話し合い、現場に合った形でさらなるバージョンアップをさせていきたいと思っています。