インタビュー

社員講師とカスタマイズで受講者の理解度アップ

損害保険業界は、2000年初頭と2010年の二度の業界大再編にさらされ、今なお変革のなかにあります。1918年創業、従業員数約5500人(2013年3月現在)の富士火災海上保険も例外ではありません。2000年にアメリカの保険会社、AIU保険と業務提携したことを契機に社員教育の抜本的な改革が必要となりました。そんな同社の教育のなかで重要な位置を占めているのが「7つの習慣®」です。研修プログラム「7つの習慣®」は2005年に導入し、既に800人以上が受講。さらに新入社員時からそのエッセンスを学ぶために、2013年から新たに「ディスカバリー」も導入しました。現在、社内ファシリテーター資格を持つ社員が講師となって研修を実施しています。

いかに社員に自立を促すか。その答えが「7つの習慣®」

日本の損保業界は長らく行政が規制により金融行政を守り続けるという、いわゆる「護送船団方式」で運営していたため、とても保守的な産業でした。そのような環境で育った人間は、当然ながら保守的な気質になります。長いこと保守的だった企業文化をどう変えるか、いかにして社員に自立を促すかは、当時も今も当社にとって極めて大きな課題です。言われたとおりに目標に邁進することが良しとされた時代から、自分のやるべきことを自分で考えて判断し、進んでいくという習慣づけをさせる必要がある。その課題にマッチしたのが「7つの習慣®」でした。

西田氏らが中心となり「7つの習慣®」の導入を行った

導入から8年。社員の自律心やキャリアマインドが高まる

「7つの習慣®」の良さは、ぶれない軸がありバランスが取れているため、今後様々なことを学ぶにあたってのベースになることです。研修は、前半部は「自立(自律と自制)」を、後半部は「相互理解・相乗効果」について学びます。個人として自立することで、自立した個人がお互いを理解し、相乗効果を生み出して組織として強くなっていくことを目的としています。当社の場合、協調は十分にできているので相互理解・相乗効果はできていると思っていました。しかし、表面的には仲がよく一見協調しているように見えていても、相乗効果を生み出すような踏み込んだ意見交換まではできていなかったのですね。やはり前半部の「個人の自立」と後半部の「組織における相互理解・相乗効果」の両方が大切なのだと実感しました。「7つの習慣®」は、世界の成功者たちの普遍的な事例が整理されているので、部門や業務内容に捉われずどのような課題にも通用する内容だと思います。

当社は、「7つの習慣®」を導入してから約8年になりますので、社員の意識はだいぶ変わってきました。主体性、ミッション、タイムマネジメント、Win-Win、相乗効果など「7つの習慣®」の内容が社内の共通言語になり、日常のあらゆる場面で取り入れられるようになっています。社員の自立心やキャリアマインドは確実に高くなってきていますね。なかには保守的な考えや行動からなかなか変われない人もいますが、少なくとも「今のままではいけない」という意識付けはできています。そう思うことが大切で、それが変革への第一歩になると思うのです。研修は毎回好評です。自分のなかに生き方の軸を持てるような内容なので、受講した人はみんな非常に前向きに、明るい表情で仕事に帰っていきます。

『「7つの習慣®」は仕事だけじゃなく、人生において大切なことを教えてくれますね』

コスト削減とカスタマイズが社内ファシリテーターの利点

「7つの習慣®」を社内ファシリテーターで実施している理由のひとつはコストが抑えられるからです。研修コストで大きいのは全国の社員が会場に移動する交通費ですが、社内ファシリテーターを派遣すればそのコストは20分の1、30分の1になります。さらに、当社なりのアレンジができるため、研修の効果がより高くなるということも社内ファシリテーターで研修を実施している理由です。当社では、通常のコンテンツにオリジナリティのある内容を加えています。

たとえば「目的を持って始める」という話なら、当社のビジネスのミッションを話すことで、日常の業務とのつながりをより明確にしています。ケースを考えるときも一般論ではなく、「当社の損害保険というビジネスに落とし込むとこうなりますね」、「たとえば代理店との関係ではこうですね」と具体的に話すことで、納得感がまったく違ってきます。受講者が理解を深めるという点では、ファシリテーターは社員であるほうが断然良いと思います。また、当社はコーポレートビジョンとして、社員が志向すべき「7つの価値観」を掲げており、この内容も「7つの習慣®」のカリキュラムと関連づけて、社員への浸透を図っています。「今、当社はどのような経営方針で何を目標としているか」など、その時々の状況もすべて織り交ぜながら話せるのも、内製化のメリットですね。

「7つの習慣®」に合わせて作った行動規範。社員全員が携帯し、迷った時も原点に立ち戻る。

研修チームのメンバーのスキルとモチベーションも向上

社内ファシリテーターの不安点を挙げるなら、やはり普通の社員がたまたまそこに配属されただけであって、プロフェッショナルの講師ではないという点でしょう。その懸念を払拭するために、講師を養成するためのトレーニングには力を入れています。研修風景をビデオに撮って、批評しあうなど講師同士が切磋琢磨する機会をかなり設けました。もちろん適性はありますが、本人がその研修の内容に確信をもち、チームのメンバーとともに様々なことを学び、しっかり努力をしていけば、普通の社員であっても十分にファシリテーターとして力を発揮できると思います。

自分で教えることをしなければ、社内教育のセクションはただのコーディネーターになってしまいます。研修の日時を組んで、誰を呼ぶかを決めて、実施してお金を払うというように。プロフェッショナルの講師を手本に、本気で人に教える・人を導くとはどういうことかを学ぶことで、彼ら彼女ら自身も磨かれていきます。自分たちが成長している実感を持ち、モチベーションが上がるという非常に良い効果が、チーム内に生まれてくるのです。社内ファシリテーターが様々な部門との接点になり、現場の課題の吸い上げや社内の多様な人材との出会いにつながることもメリットの1つです。課題を次の研修に活かすことはもちろんのこと、研修を通じた良質なコミュニケーションが人材の発掘や現場ニーズの把握にもつながっていて、人事部門全体でとらえても大きな効果を発揮しています。

社内ファシリテーター制度を導入したことで、社内教育に携わる社員の成長にもつながった

社内ファシリテーター養成コースとは

フランクリン・コヴィーとのライセンス契約に基づいて社内ファシリテーター資格を取得し、同社の研修プログラムを組織内で実施できる制度です。多くの企業で研修の内製化が進むなか、より質の高い研修を実施できるよう所定の養成プログラムや研修ツールの提供など、様々な支援をしています。社内ファシリテーター活用による研修の内製化にはコスト削減のほか、組織の課題や状況に即したコース設計ができるといったメリットがあります。

社内ファシリテーター養成コースは、4泊5日の集合研修で取得する集中研修コースとオンラインで取得するウェブ養成コースの2つがあります。集中研修コースの特徴は、同じ境遇の参加者と共に学ぶことから、多くの気付きを得ることができます。また、直接、講師に質問や相談をすることができるため、より理解が深まります。ウェブ養成コースの特徴は、オフィスや自宅、通勤時など、いつでも、どこでも、好きな時に取得コースを受講できることです。パソコン、タブレット、スマートフォン(※)での利用が可能です。

※タブレット、スマートフォンの推奨環境はiOS6.1以上です

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