組織を束ねるリーダーとして働く上で欠かせないのが「デリゲーション(delegation)」だ。
簡単に言うと、デリゲーションとは、誰かに仕事を任せることを意味する。
日本では、このデリゲーションを苦手とする人が多い。
「自分でやった方が早い」「人に頼むと気苦労が増える」「期待するような結果が返ってこない」などと言う人もいる。
しかし、確かな技術とスキルを持つ人に仕事をお願いできれば、自分はもっと重要なことに力を注ぐことができる。
その結果、チームとしての成果を何倍にもすることができるのだ。
ただし「これ取ってこい、あれ取ってこい、これをやれ、あれもしろ、終わったら私を呼べ」という使い走りのやり方では、限界がある。
仕事のやり方を指定して管理しようとすると、何人もマネジメントすることはできない。
そして結果に対する責任も自分自身で負うことになる。
これでは出せる結果は知れているだろう。
では、どうすればいいのだろうか。
その方法を、スティーブン・R・コヴィー博士は、著書『7つの習慣』の中で「全面的なデリゲーション」と名付け、次のように説明している
全面的なデリゲーションは、手段ではなく結果を重視する。手段は自由に選ばせ、結果に責任を持たせる。初めは時間がかかるが、その時間は決して無駄にはならない。
そして、全面的なデリゲーションをおこなうためのポイントとして5点あげている。
簡単に説明しておこう。
■望む成果
何を達成するか、手段ではなく結果について、時間をかけて納得するまで話し合う。
いつまでに成し遂げる必要があるのか期限も決めておく。
■ガイドライン
守るべき基準やルールがあれば明確にしておく。
失敗する可能性の高いところがあれば、最初に教えておく。
ただし、してはいけないことの説明にとどめ、やり方を指示するのは控えることが大切だ。
■リソース
望む結果を達成するために使える、人員、賃金、技術、組織、リソースを明確にしておく。
■アカウンタビリティ
成果を評価する基準を定め、仕事の進捗の報告を求める時期、評価を行う時期を決めておく。
■評価の結果
評価の結果として、良いことも悪いことも具体的に話しておく。
人は信頼されていると思えば、最大限の力を発揮する。
しかし、そのためには時間と忍耐が必要だろう。
自分の時間を使うときは効率性を考えるが、人に任せるときは効果性を考えたマネジメントが必要になってくる。
任せる相手の能力に合せて、望む結果のレベルを決め、ガイドラインの数やリソースのボリュームを検討する必要があるのだ。
この点を意識して、まずは取り組んでみてほしい。