
こんにちは、フランクリン・コヴィー・ジャパンです。
この記事では、組織の実行力を見えない形で阻害する「組織的摩擦(Organizational Friction)」の正体と、その具体的な原因、そして明日から実践できる解決策を、具体的な事例を交えて解説します。
目次
なぜ今、「組織的摩擦」に目を向けるべきなのか
自転車のブレーキを少しだけかけたまま、必死にペダルを漕いでいる人を想像してみてください。進みが悪いだけでなく、ものすごく疲れますよね。組織の中で起きている「摩擦」も、これと全く同じです。
組織的摩擦とは、組織の目標達成を妨げる、不必要で過剰な手続き、複雑なプロセス、不明確な役割分担、コミュニケーション不足といった、目に見えない阻害要因のことです。一つひとつは小さくても、積み重なると組織全体のスピードとエネルギーを静かに奪っていきます。
特に、デジタル化やリモートワークが普及した現代では、新たな種類の摩擦が生まれています。次から次へと届くチャット通知、目的が曖昧なオンライン会議の連続、隣の席なら一言で済むような用件にもわざわざ日程調整が必要になる状況。これらはすべて、意図せずして業務の「ひっかかり」を増やしています。
この見えないブレーキの存在に気づき、解消することが、組織の実行力を高める上で今、非常に重要になっています。
組織的摩擦を減らす3つの処方箋

では、どうすればこの厄介な摩擦を減らせるのでしょうか。ここでは、私たちがクライアントと共に実践し、効果を上げてきた3つの具体的なアプローチをご紹介します。
目的と役割の「見える化」で、無駄な動きをなくした
摩擦が起こる最大の原因の一つは、「誰が、何を、いつまでにやるのか」が曖昧なことです。各自が「誰かがやってくれるだろう」「これは自分の仕事だろうか?」と手探りで動くため、業務の重複や抜け漏れが発生します。
これを解決するのが、役割分担の明確化です。例えば、RACI(レイシー)チャートという、業務の役割分担を明確にする手法があります。タスクごとにResponsible(実行責任者)、Accountable(説明責任者)、Consulted(相談先)、Informed(報告先)の4つの役割を割り当て、「誰が何をするか」を可視化します。特に、最終責任者(A)を必ず一人に絞ることで、意思決定の遅れや責任の曖昧さをなくすことができます。
あるIT企業では、新機能開発プロジェクトで役割が曖昧でした。エンジニアと企画担当者が互いに相手の承認を待ってしまい、2週間も停滞。RACIチャートを導入し、「最終責任者(A)」を企画部長に定めたところ、意思決定が即日に行われるようになり、開発速度が1.5倍になりました。
意思決定プロセスを「シンプル」にし、スピードを上げた
「念のため、〇〇さんにも承認を…」「とりあえず、関係者全員で会議を…」こうした過剰な承認プロセスや会議は、意思決定のスピードを著しく損なう典型的な組織的摩擦です。
本当にその会議は必要でしょうか?その承認は不可欠でしょうか?一つひとつのプロセスに疑問を持つことが重要です。
ある小売業のクライアントは、新商品の承認に7段階のプロセスがありました。これを「関係部署の代表者1名ずつ」が集まる1回の会議で決めるように変更。結果、商品化までの期間が平均で1ヶ月短縮され、市場の変化に迅速に対応できるようになりました。
会議のアジェンダに「この会議での決定事項は何か」を必ず明記するルールを設けるだけでも、会議の目的が明確になり、不要な議論や時間の浪費を防ぐことができます。
「心理的安全性」を高め、率直な対話を促した

「こんなことを言ったら、どう思われるだろうか…」という懸念から、問題の報告が遅れたり、改善提案が出なかったりする。これもまた、組織の成長を妨げる深刻な摩擦です。
心理的安全性が低い組織では、人々はリスクを避けるために口を閉ざしてしまいます。結果として、小さな問題が手遅れになるまで放置されたり、イノベーションの芽が摘まれたりするのです。
これを解決するには、リーダーが率先して「何を言っても大丈夫だ」という空気を作ることが不可欠です。例えば、リーダーが「その意見は面白いね、もう少し聞かせて」と、どんな発言もまずは受け止める姿勢を見せたりすることが、チームの心理的安全性を高めます。
率直な対話が生まれることで、問題の早期発見や建設的な議論が活発になり、結果として組織はよりスムーズに前進できるようになります。
摩擦を減らそうとして、新たな摩擦を生まないための注意点

良かれと思って導入した新しいルールやツールが、かえって現場の負担を増やし、新たな摩擦を生んでしまうことがあります。そうならないために、2つの点に注意してください。
第一に、完璧なルールを目指さないことです。最初から網羅的なルールを作ろうとすると、複雑で使いにくいものになりがちです。まずは「7割主義」でスモールスタートし、運用しながら改善していく方が、結果的に現場に定着しやすくなります。
第二に、ツールの導入が目的にならないようにすることです。便利なプロジェクト管理ツールも、導入目的や使い方が浸透しなければ、ただの「入力作業」という新たな摩擦を生むだけです。「なぜこれを使うのか」「これによって何が解決されるのか」という目的を丁寧に共有することが成功の鍵です。
「組織的摩擦」に関するQ&A
Q1: 組織的摩擦とは何ですか?
A: 組織的摩擦とは、組織の目標達成を妨げる、不必要で過剰な手続き、複雑なプロセス、不明確な役割分担、コミュニケーション不足といった、目に見えない阻害要因のことです。これにより、業務のスピードが落ち、従業員のエネルギーが浪費されます。
Q2: どんな兆候がある時、組織的摩擦が大きいと判断できますか?
A: 「簡単なことにやたらと時間がかかる」「会議ばかりで何も決まらない」「誰が責任者なのかわからない」「似たような資料を何度も作っている」といった状況が頻繁に起こる場合、組織的摩擦が大きい兆候と言えます。
Q3: 摩擦は完全になくすべきですか?
A: いいえ、全ての摩擦が悪いわけではありません。例えば、コンプライアンスチェックや品質管理といった「健全な摩擦」は、リスクを防ぎ、組織の質を保つために必要です。なくすべきは、価値を生まない「不健全な摩擦」です。
まとめ:小さな「ひっかかり」を取り除くことから始めよう

組織的摩擦は、組織の体力を静かに、しかし確実に奪っていく要因です。しかし、その正体は、日々の業務に潜む小さな「ひっかかり」の集合体であり、一つひとつは決して解決不可能なものではありません。
まずは、あなたのチームで「これって、もっと簡単にできないかな?」と感じる業務を一つだけ見つけてみてください。そして、その原因となっている小さな摩擦を取り除くことから始めてみましょう。承認プロセスを一つ減らす、定例会議のアジェンダを一つ見直す。その小さな一歩が、組織全体の実行力を高める大きな推進力になります。
パフォーマンスのよい組織の共通点には以下のようなものがあります。
- 各階層で優れたリーダーを育成する
- 個々人に効果的な習慣を形成する
- 包括的で信頼性の高い文化を構築する
- 共通の実行システムにより最重要目標を追求する
フランクリン・コヴィーは、上記の4つの重要領域における組織の行動変容の実現を通して「お客様の成功」に貢献するサービス提供や支援をしています。人材育成や、組織風土の醸成や変革などご検討されている方はお気軽にこちらからお問い合わせください。







