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社内環境の改善にとどまらない。理念がある会社を選ぶ大きなメリットとは

企業には、社訓であったりミッションであったりと、会社の理念と呼べるものが存在する。
しかし、「顧客第一」という理念がある会社に共感して入社したものの、社内ではまったくその理念が守られていなかったり形骸化していたりして、がっかりしてしまったという新入社員もいる。

 

形骸化した理念など、会社に必要あるのだろうか。
いっそのこと、理念がない会社のほうが柔軟に働くことができるのではないか。
仕事への情熱がある人ほど、こういった疑念について真面目に考え込んでしまうことすらある。

 

しかし、会社にとって理念は必要だということを、改めてお伝えしたい。
コヴィー博士の長男であるスティーブン・M・R・コヴィーは、著書の『スピード・オブ・トラスト』の中でこのように述べている。

組織の「誠実さ」を高めるには、組織のミッション・ステートメントやバリュー・ステートメントを作成するとよい。この作業には全員を関与させ、それらしいモットーを壁に貼りだすのとは訳が違うことを分からせるべきである。また、約束をし、それを守るという文化を組織内に構築するのもよいだろう。これは毒にリーダーに欠かせないことであり、また些細な事柄ほどその重要性が高まるのだ。
(スティーブン・M・R・コヴィー『スピード・オブ・トラスト』キングベアー出版 )

 

ミッション・ステートメントとは、企業・従業員が共有する価値観・社会的使命であるミッションを、実際の行動指針や方針として、具体化することだ。従来の「社訓・社是」や「経営理念」にあたる。
つまり、会社に理念があるからこそ、ミッション・ステートメントを構築することができる。そして、それによって社員の「誠実さ」が高まり、よりよい組織を作りあげることができるということだ。

もちろん、どんな理念でもただ作って掲げれば良いというものではない。
M・R・コヴィーは、「勤勉に働く」、「賢く働く」、「働くことを楽しむ」を社訓にしている会社の事例を紹介している。

ある時、あるブローカーが、巨大プロジェクトの構想を持つクライアントの代理として我々に接近してきた。彼は、町のデベロッパー上位十社から入札を募るつもりだった。我々はそのチャンスを喜んだが、交渉が進むにつれ、このブローカーは敵対的な要求を突きつけてきて、取り引きのしにくい相手であることが分かった。(中略)そして、一〇回目の話し合いの席だった。担当の上司が私のほうを見て「スティーブン、ちょっと聞いてもいいかな。君はこの商談に関わっていて楽しいと感じるかい?」と言った。私は楽しくないと認めざるを得なかった。すると、彼は言った。「いや、私も同じだよ。楽しむことが、うちの会社のモットーの一つじゃないか。それができない以上、私たちは入札を辞退させてもらおうじゃないか」

(スティーブン・M・R・コヴィー『スピード・オブ・トラスト』キングベアー出版 )

 

このように、いくら大口の取引であったとしても、自分たちの理念に反すると感じたとき、その案件からは手を引かなければならない。
これはきっと勇気の要る行為だ。しかし、この決断によって会社の理念・価値観を知らしめ、それによって自分たちの理念にぴったりと合うクライアントだけと気持ちの良い取引ができるようになることは想像に難くない。

理念がある会社のメリットは、お互いに誠実な社内環境を整えるだけでなく、このようにして社外へもポジティブな変化をもたらすことだ。
自分がどのようなビジネスマンでありたいか、どのような会社で働きたいか、そして、どのような価値を世の中に届けたいかを考えたとき、やはり理念のない会社を選ぶ理由はないのである。

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