
組織に新しく加入したメンバーを迎え入れるオンボーディング。従業員が力を発揮できる環境を整えるためには、うってつけの手法です。しかし、具体的なオンボーディングの手法や導入について分からないという場合も多く見受けられます。
そこで本記事では、オンボーディングの手法やメリット・デメリット、導入上の注意点などについて解説します。オンボーディングの具体的な実例も紹介しているため、従業員の働きやすい組織を作るための参考にしてください。
目次
オンボーディングとは
オンボーディングとは、新しいメンバーが組織に馴染みやすくするために、組織が主導して提供する取り組みのことです。具体的には、チームメンバーとのランチミーティングや社内ルールの説明、懇談会などがあります。
新しいメンバーの定着率向上や早期戦力化だけでなく、社内コミュニケーションの強化や教育格差が起こるのを防止するなど様々な効果が期待できるとして、高い注目が寄せられています。
メンバーが組織に加入してから3ヶ月から1年程度と、比較的長期間実施されることも特徴の一つです。
OJTとの違い
OJTとは、On-The-Job Trainingの略で、職場の実務を通して行う教育訓練のことです。OJTでは即戦力を期待し、実務を通して新しいメンバーに訓練を施します。
一方、オンボーディングは新入社員の早期離職と教育格差を防ぎ、早期活躍を促す目的で実施する教育のことです。具体的には、座学を中心とした研修や1on1ミーティング、ランチや歓迎会なども含まれます。オンボーディングの一環として、OJTを組み込んでいる組織も多くあります。
顧客へのオンボーディングとは
営業手法の一種である「カスタマーサクセス」においても、オンボーディングの考え方は用いられています。
カスタマーサクセスにおいてオンボーディングとは、顧客がサービスを使い始めてから、サービスを使いこなせるまでを支援するプロセスのことをいいます。
たとえば、チュートリアルやガイドの提供や、サポートチームによる直接のサポートなどが挙げられます。
なぜオンボーディングは注目される?

年々注目度の高まるオンボーディング。どのような理由から、取り入れる組織が増えているのでしょうか。三つの観点から解説します。
減らない早期離職率
2021年に公表された厚生労働省の調査によると、新卒で就職した人間が3年以内に離職する割合は、高卒就職者で約4割(36.9%)、大卒就職者で約3割(31.2%)と、3〜4割の高水準が続いています。
また、内閣府の調査によると、初職の離職理由は、「人間関係がよくなかったため」が2位(23.7%、2017年度の調査)。
オンボーディングで人間関係を良好なものにすることで、早期離職率を下げるねらいがあります。
深刻な人材不足
少子高齢化などの理由から、現在、日本国内では慢性的な人手不足の問題が生じています。
2018年版の中小企業白書によると、日本国内における全ての業種が、2013年以降はずっと人手不足を感じているという結果が出ています。また、帝国データバンクによる調査によれば、2023年1月時点で人手不足を訴える組織は、正社員で5割超、非正社員で3割超に。
人材が定着しやすい組織を作り人材不足を解消するためにも、オンボーディングのような取り組みは必須といえるでしょう。
リモートワークでの孤立感
コロナ禍以降、リモートワークが一般化しました。コロナ禍が過ぎ去り、オフィス出社を義務付けたり、週○回出社、週○回リモートワーク、といったハイブリッド型の勤務形態を採用するケースなどワークスタイルは多様化しています。一方で、業種や経営者の考え方によってはリモートワークが中心、場合によっては、出社を一切不要としている組織もあります。
リモートワークにはメリットも多い反面、他の従業員とのコミュニケーションが取りづらく、孤立を感じやすいなどのデメリットもあります。オンボーディングを取り入れ、従業員間でのコミュニケーションを活発にすることで、ストレスを感じにくい環境を作れます。
オンボーディングを取り入れるメリット
オンボーディングを取り入れることで、組織にはどのようなメリットが生まれるのでしょうか。順番に解説していきます。
従業員のモチベーション維持
オンボーディングでは、ランチミーティングや懇談会など、従業員間のコミュニケーションを活発にする取り組みが多く実施されます。
これにより、従業員間で意見をかわしやすい環境が作られることや、新規メンバーが組織文化を早期に理解することなど、さまざまな効果が期待できます。
結果として、全従業員が組織への愛着を形成し、働くモチベーションを高めることが期待できるでしょう。
組織の生産性向上
オンボーディングを実施することで、新メンバーは組織のビジョンや目標を理解し、自分がどのような役割を担うべきかを明確に把握できます。この結果、業務に対して自発的に取り組むようになることが期待できるでしょう。
また、新メンバーが早期に組織文化やルールを理解し、組織の一員であること実感すれば、組織に愛着を持つことも期待できます。
オンボーディングの実施で、組織の生産性を高めることが予想されます。
採用コストを減らせる
オンボーディングを実施することで、組織の新しいメンバーは入社後の不安や疑問を早期に解決できます。この結果、内定辞退や早期離職といった選択をせず、組織に長く定着することが期待できるでしょう。
早期離職や内定辞退の数が増えると、そのために割いた採用費用や育成費用が無駄になるほか、採用プロセスの見直しや、新たな人材の採用などに対して多くの手間や時間がかかってしまいます。
オンボーディングを実施することで、新規人員の採用や、教育にまつわるコストを削減できる可能性が高まります。
オンボーディングの導入方法
オンボーディングの取り組みには、具体的にどのようなステップが必要になるのでしょうか。入社前、入社直後、入社後の三つの段階に分けて解説します。
1. 入社前|ビジョンの提示
まずは、新メンバーが加入することを既存の従業員に対して伝えます。
この際、オンボーディングの実施内容を周知しておき、教育方針を共有したり、教えることをリスト化したりすることで、混乱が起こらないようにします。
新メンバーに対しては、組織のビジョンや方針を示すなどして、入社前の不安をやわらげましょう。
2. 入社直後|入社前とのギャップを防ぐ

新規メンバーの加入後は、事前に立てたプランやスケジュールに沿ってオンボーディングを実施します。
具体的な施策としては、1on1ミーティングや面談、歓迎・懇親イベント、OJTや相談対応などが挙げられます。
働く前と働き始めた後で、新メンバーが組織に対して違和感やギャップを抱かないようにすることを心掛けましょう。
3. 入社後|長期的な信頼関係を築く
入社後しばらくしてからも従業員へのサポートを継続することで、長期的な信頼関係の形成につとめます。この際は、配属先の現場に全てを任せず、人事などの関係者もサポートに回るのが理想的といえるでしょう。
たとえば、定期的にミーティングを実施することや、メンターや相談窓口などを設け、疑問や不安を解消できる環境を整えることなどが具体的な施策例として挙げられます。
オンボーディングを導入する際の注意点
メリットの多いオンボーディングですが、導入には注意も必要です。具体的な注意点について解説します。
既存メンバーのサポートも実施
新しいメンバーのサポートだけでなく、トレーナー側に回るメンバーにも研修などのサポートを実施することで、より質の高いオンボーディングが実施できます。
既存メンバーに期待する役割を明確にしておくことや、既存メンバーのための相談窓口を設置することも検討しましょう。
また、定期的にオンボーディングのメニューや内容を見直すことも重要です。
トレーナーと新メンバーの相性を考慮
オンボーディングでOJTなど新人教育を実施する場合、組織立った取り組み方法が構築されていない場合は、トレーナー側に過剰な負担がかかることも考えられます。
このため、可能であれば新メンバーとトレーナーの相性を考慮するなど、トレーナー側が安心してオンボーディングに取り組める環境を整えましょう。
場合によってはトレーナーを変更するなどの対応も取れるよう、相性を確認するテスト期間を設けてもよいかもしれません。
オンボーディングの導入事例3選
ここからは、実際に組織がオンボーディングを導入している事例について解説します。
1. 株式会社マネーフォワード
株式会社マネーフォワードは「中途採用の従業員の活躍は、本人ではなく、既存の従業員が取った行動次第で決まる」という考え方のもと、中途採用の従業員に対する手厚いオンボーディングを実施していることで知られています。新メンバーにメンターを付ける、事業理解のオンライン研修に力を入れるなどの取り組みが実施されています。
2. GMOペパボ株式会社
GMOペパボ株式会社は、フルリモート採用の人員に対しても、入社や異動後、一定の期間出社する機会を設けています。チームメンバーと対面でコミュニケーションをとることで、その後のリモートワークでもスムーズな業務を進行することがねらいです。
また、1on1やスケジュールランチ、オンライン上の相談窓口を設けるなどのサポートも実施しています。
3. サイボウズ株式会社
サイボウズ株式会社のオンボーディング研修は、サイボウズの文化である個人の自立やチームワークといった考え方を軸に実施されています。
研修は全てフルリモートで実施するほか、内容は全て動画に残すなど、従業員が後から復習しやすい環境が整えられていることが特徴です。
また、懇談会やランチ費用の補助、ヒアリング、資格などの学習支援も提供されています。
まとめ

組織に加入した新メンバーの働きやすさを高めるオンボーディング。人材不足が深刻な問題となっている現代において、従業員の離職率を下げるための取り組みとして大きな注目が集まっています。
導入にあたっては、具体的な取り組み内容の決定や、従来の従業員へのフォローなど、検討するべきことも数多くあります。
正確な知識を身につけることで、従業員が安心して働ける環境を作り上げましょう。
パフォーマンスのよい組織の共通点には以下のようなものがあります。
● 各階層で優れたリーダーを育成する
● 個々人に効果的な習慣を形成する
● 包括的で信頼性の高い文化を構築する
● 共通の実行システムにより最重要目標を追求する
フランクリン・コヴィーは、上記の4つの重要領域における組織の行動変容の実現を通して「お客様の成功」に貢献するサービス提供や支援をしています。人材育成や、組織風土の醸成や変革などご検討されている方はお気軽にこちらからお問い合わせください。







