第1の習慣『主体的である』

『7つの習慣』の著者スティーブン・R・コヴィー博士は、「第1の習慣は、『7つの習慣』を実践する上で最も重要な習慣である」と言っています。それはどういうことでしょうか?
第1の習慣は自らの感情や行動を他の誰かに振り回されるのではなく、原則をもとに自分で選択する習慣です。「私は自分の人生のプログラマーである」ということを知ることから始めます。

主体的であるとは

「主体的」
あなたはこの言葉からどんな行動をイメージするでしょうか?

率先して行動する。
自分ごととして捉える。
逃げない、あきらめない。

どれも正解です。しかしここではさらに「自らの反応を選択し、その責任を引き受ける」という考え方も加わってきます。どういうことでしょうか?もう少し詳しく見ていきましょう。

第1の習慣の概要

第1の習慣の原則に基づくパラダイム(ものの見方、考え方)は、「私には選択の自由がある。自分の幸せの責任は自分自身にある」です。
このパラダイムをもって、4つの行動を実践します。
1つ目は「刺激と反応の間にスペースがあることを意識し、原則と望む結果に基づいて反応を選択し行動する」です。
2つ目は「主体的な言葉を使う」
3つ目は「影響の輪にフォーカスする」です。影響の輪とは、自分が影響・コントロールできること、関心の輪とは自分が懸念していること、気がかりに思っていることだけれど、直接影響・コントロールできないことを指します。
4つ目は「流れを変える人になる」です。これはこれまでの悪い行動パターンを断ち切り、新しい行動パターンを生み出す人です。

刺激と反応

私たちの周りに起こるさまざまな出来事、これを「刺激」と言います。それに対して自分がどんな言動を選択するか、これを「反応」と言います。私たちは日々さまざまな反応を選択していますが、それは本当に自らの意思によるものでしょうか?
「でも……、しかし……、どうせ……」など、自分自身のことを決めつけ、そういう状況に置かれた自分を他の誰かのせいにしていないでしょうか?

決定論

私たちは何かを言ったり、行う時に、最初から何らかの結果を自分自身で決めつけてしまっていることがあります。例えば、「私には、マネージャーなんて無理だ」「ITリテラシーが低いからパソコンのことは弱い」「私には朝に弱い」などです。自分のことだけではありません。他人に対しても「なんでそんなことも理解できないのか?」「君はどうして机の上の片付けができないんだ」と相手に対して批判する場面もあります。これらの言葉は、自分自身や相手のありのままの姿や可能性を反映したものではありません。
これは言っている本人のパラダイム、人格的な弱さを通して相手を見ているのです。

コヴィー博士はこのことについて3つの決定論に分類されると述べています。

遺伝子的決定論
「あの人が怒りっぽいのは親父譲りだ」
「日本人だから仕方ない」
自分の性格はDNAのせいだから仕方ない、という考え方です。

心理的決定論
「親が厳しいからああなっちゃったんだね」
「もっとお金持ちの家に生まれていれば」
子ども時代の体験や、親の育て方のせいなど過去の経験からこうなってしまった、という考え方です。

環境的決定論
「国の政策のせいで暮らしが苦しいのだ」
「会社がこれだから何をやっても無駄だ」
自分を取り巻く環境がこの状況を作っている、という考え方です。

これらは、社会通念や世論、周りの人たちがもっているパラダイムによって、自分自身や相手を決めつけてしまっているのです。私たちは、遺伝や生まれた環境などのせいで自分の運命や性格が決められていると考えることがあります。たしかに環境はその人の性格や言動に大きな影響を与えますが、それは本当に変えることができないのでしょうか?
私たちは、そうした決定論に左右されず、自分自身で自分の行動を主体的に選択することができるのです。

反応的な人、主体的な人

「反応的な人」とは、刺激と反応の間にスペースが空いていない人のことを言います。自分に向かってやってきた刺激に対して、気分や感情のままに反射的に反応します。気に入らないことを言われたら言い返したり、言い訳をしたりします。不機嫌な相手と一緒にいれば不機嫌になり、相手が皮肉を言えば皮肉で返すなど、刺激に対してそのまま反応してしまいます。
また、他の人の言動にそのまま左右される人も反応的な人だと言えます。「あなたはダメな人だ」と言われたらそれだけで自分の可能性を否定し、誰かに無視されたら自分は価値のない人間だと思い込みます。これでは自分のことを大切に思うことはできません。

反応的な人は自分で反応を選択できません。いつも誰かのせいにしています。「部長のあの言い方はないよな、やる気をなくすよ」「私はこの会社で必要とされていない」「妻の余計な一言がいつも私をいらだたせる」こんなことを言ったことはありませんか?

他人の言葉や態度で自分の感情が大きく左右されてしまう、これではまるでテレビのリモコンを相手に渡して「さあ、操作してください」と言っているようなものです。「傷ついた」と感じた時、それは本当に相手のせいでしょうか?もしかしたら傷つくという選択を自分でしているのかもしれません。
そのように考えるのは非常に難しいことです。今のこの状況は自分で選択したのだと言われても、素直に受け止められる人は少ないでしょう。今が辛い状況ならなおさらです。

しかし「主体的な人」とは、刺激に対して即反応するのではなく、刺激と反応の間にスペースがあることを意識し、自分で自分の反応を選択して行動できる人のことです。反射的に言い返すのでも作り笑いで我慢するのでもありません。反応を自分で選択するのです。

私たちにはその力があります。傷つくのも傷つかないのも、惨めになることもならないことも選択することができます。なぜなら私たちには人間にしかない4つの力が備わっているからです。

4つの力

4つの力。普段私たちはその力を意識することなく暮らしています。それはどんな力なのでしょうか?
「自覚」自分の置かれている状況を客観的に見ることができる力
「想像」自分の経験や現実を超えたその先を想像する力
「良心」ものごとの良し悪しや、自分の考えが原則と一致しているかを判断する力
「意志」さまざまな外的な影響に縛られずに、選択を実行する力

こんなふうに書くと、「いやいや、そんなに毎回4つの力を意識して判断なんてできるの?」と思う方もいるかもしれません。大丈夫です。私たちにはもともとこの力が備わっているのです。

想像してみてください、9時出勤なのに9時に目が覚めてしまった時のことを。

「まずい!9時だ!今日は休み……じゃない、つまりこれは……遅刻だ」(自覚)
「どうしよう?具合が悪いことにしようか?それだと午後のアポイントもキャンセルしなくては……子どもが熱を出したということに?それだと周りに気を使わせてしまうし……」(想像)
「ここはやはり正直に寝坊したことを報告するしかない」(良心)
そしてスマートフォンを取り上げ、会社に電話し、「もしもし、課長ですか。申し訳ありません。今日はうっかり寝坊をしてしまい……」(意志)

いかがでしょうか?私たちはこの4つの力を普段から無意識に使っています。
もしあなたに刺激となる出来事が生じた時、効果的な行動を取り、効果的な結果を得たいなら刺激と反応の間にスペースをあけて「意識的に」4つの力を使ってみましょう。そして自分が望む結果は何か、その行動は原則に基づいているのかを考えてみてください。そうすることで後悔しない選択をすることができます。

現在は過去の選択の結果である、とよく聞きます。思い出してみてください、過去に「ああ、あれは選択ミスだったなぁ」と思えること、たくさんありますよね。その選択ミスの原因は、刺激と反応の間のスペースを意識せずに反応してしまったか、その時の自分の置かれた状況を自覚していなかったか、想像力が足りなかったか、良心に背く行動をしてしまったか、わかっていたけれども実行する意志が弱かったか。このうちのどれかではないでしょうか?

現在が過去の選択の結果であるのなら、未来は今から先の選択の結果です。後悔のない選択をしたいものです。

「影響の輪」にフォーカスする

あなたの1週間の出来事を思い浮かべてください。その中には、自分で影響・コントロールできること、つまり「影響の輪」の出来事と、心配・気がかりではあるものの自分で影響・コントロールできないこと、つまり「関心の輪」の出来事があります。

普段はこの二つを明確に切り分けて考えることは少ないと思います。しかしもし自分で影響、コントロールできないことばかりに時間とエネルギーを費やしていたとしたら?

コントロールできることとできないこと

「関心の輪」
例えば明日の天気、日本の景気、不機嫌な上司など。これらは自分で影響・コントロールできません。つまり「関心の輪」です。関心の輪に思い悩むのは賢い時間の使い方ではありません。それらはあなたが頭を悩ませたところで、何も状況は変わらないからです。投じた時間や努力が報われることはあまりないでしょう。あるいは愚痴を言ったり八つ当たりをしたり、自分だけでなく他の人にも悪い影響を与えてしまうかもしれません。

「影響の輪」
対して、明るい挨拶や新しいやり方の提案、自分自身の勉強時間、これらは自分で影響・コントロールできます。つまり「影響の輪」です。明日の天気はコントロールできませんが、いつ洗濯物を干すかはコントロールできます。上司の機嫌はコントロールできませんが、それに対する自分の反応はコントロールできます。影響の輪に集中することは、心の安定をもたらします。投じた時間や努力が成果という形で返ってきますし、たとえ思ったほどの結果でなかったにせよ、自分が行動して得た結果であれば納得感はあるはずです。

ノートに大きく二重丸を書いてみましょう。内側の丸は影響の輪、外側の丸は関心の輪です。そこにあなたの一週間の出来事を思いつくままに影響の輪と関心の輪に振り分けて書いてみてください。自分がコントロールでき影響できるものは影響の輪です。自分がコントロールできず、影響できないものは関心の輪です。

書き終わったらその二つを見比べてみてください。いかがですか?この2つの輪のうち、自分の時間とエネルギーをどこに費やしていますか?どこに費やしているかであなたの主体性の度合いがわかります。

主体的な人は自分がコントロールできる影響の輪にフォーカスしています。みなさんも関心の輪の出来事に自分の時間とエネルギーを費やすのではなく、この状況の中でも自分には何ができるかを考えるようにしてみてください。

主体的かどうかは使う言葉でわかります。

大リーグで活躍したイチロー選手は、ライバルの成績が気になるか?と記者に聞かれてこう答えたそうです。『愚問ですね。他の選手の成績は僕にはコントロールできない。気にすることはありません』イチロー選手にとっては他の選手の成績は関心の輪、それを気にする時間があったら影響の輪であるトレーニングや体調管理に集中する方が良い、と考えたのかもしれませんね。

主体的な言葉を使う

どんな言葉を発するか?これは自分でコントロールできます。意識的にせよ無意識的にせよ、あなたの発する言葉はあなたが選択しています。そして選択したその言葉は周囲の人にも少なからず影響を与えます。

身近な人が関心の輪にばかりフォーカスしている人がこんなことをいつも言っていたら、あなたはどう感じますか?
「あの部長の下ではやってられない」
「システムが古いからどうにもできない」
「言ってもどうせ変わらない」
「うちの会社じゃあ永遠に無理だね」
「誰も私の話を聞いてくれない」
どうでしょうか?なんだかこの人とは距離を置きたくなってきませんか?
関心の輪にフォーカスしすぎると発言はどんどん攻撃的になったり悲観的になったり、周囲の人が離れていってしまうような状況になりがちです。結果的に自分の影響の輪が小さくなっていってしまいます。

一方で影響の輪にフォーカスする人はどうでしょう。
「私たちにできることは何だろうか?」
「私たちの強みはなんだろう」
「動けば変わるかもしれない」
「とにかく提案してみよう」
「まずはこちらから働きかけてみよう」
どうでしょうか?たとえ同じ状況に置かれていたとしても、後者の方がなんだか応援したくなってきませんか?そして何よりも、主体的な言葉を使う私たち自身の気持ちが前向きなものへと変わります。

影響の輪にフォーカスする主体的な人は前向きで建設的な発言をします。その言葉に行動を一致させることで信用が生まれ、信用ある人の影響の輪はさらに広がり、周囲の人を巻き込むポジティブなエネルギーに変わっていきます。

「持つ」と「ある」

関心の輪にフォーカスする人は「持つ」という考え方をします。
「もっと部下思いの上司を持っていれば」
「良い学歴を持っていれば」
影響の輪にフォーカスしている人は「ある」という考え方をします。
「私はもっと愛情深くありたい」
「信頼される人間であるためには」
「持つ」は問題が自分の外にあると考えます。自分が変わるためには自分の外側がまず変わらないといけないと考えます。それに対して「ある」は自分自身が変わることで外側に良い影響を与えていこうとします。
より良い配偶者である、積極的に提案をする部下である、子どもの話をしっかりと聞く親である。さまざまな「ある」を選択することで私たちの人生はより主体的なものに変わっていきます。

誰もがつらい状況下に置かれたとき、他者や周りの状況のせいにする方が簡単です。しかし、自分の人生をコントロールし、自分のあり方「ある」に意識を向けて働きかけることで、周囲の状況に強い影響を与えられるのです。

状況を良くしたいのなら、まず自分が直接コントロールできること、自分自身に働きかけるということです。

流れを変える人になる

私たちの人生は自分でつくるものです。環境や状況に流される必要はありません。望ましくない流れを断つのも、それに流されるのも自分自身が決めることです。
自らの責任で選択の自由を発揮し、自分で方向を決めて歩むことで、これまでとは違う流れに変えることができます。そういう人を「流れを変える人」と呼んでいます。

何も大きなことを変える必要はありません。

私たちは好ましくない流れを断ち切ったり変えたりすることができる力を持っています。自分の可能性に蓋をするのではなく、主体的な選択をし、自分をそして未来を変える力を私たちはみな持っているのです。

まとめ

主体的であるとは、自ら自分の行動を選択して、選択したことに対して、責任をもつことです。一般的に言われている「率先して行動する」だけとは違うニュアンスをもっています。まず、自分に生じるネガティブに感じられる刺激的な出来事に対しても、感情的にならず、一時停止を行い自分の価値観や原則に従って行動を選択することがまず第一歩と言えるでしょう。

また私たちは刺激に対して、人間がもともともっている4つの力を使うことができます。置かれている状況に対してまず自分が何を思っているのかを「自覚」することがポイントです。そして想像力や良心の力を使い自分の行動を選択するのです。

行動を選択する上で、どこに時間とエネルギーを費やして行動したらいいのか「影響の輪と関心の輪」のモデル図で整理してみてください。関心の輪の中で自分がコントロールし影響を与える活動、つまり影響の輪へ活動に落とし込んだら、実践しましょう。

影響の輪に集中することにより、信頼性が高まり、周りの人々はあなたの人格と能力を信頼するようになります。周りから信頼されるにつれて影響力がさらに増していきます。また、強い決意を持つ主体的な人は、従来からある悪しき慣習や悪い行動パターンを断ち切ることができます。彼らは流れを変え、そのかわりに積極的かつ建設的な行動を示していくことができます。

私たちは皆、模範を通して周りの人々の行動、感情、ライフスタイルなどに影響を与えています。模範を示し、リーダーシップを発揮することにより私たちは周りの人たちのために流れを変える人になり、意識的に悪い行動パターンを断ち切り、そのかわりによい建設的な行動を植えつけることができるのです。

 

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「7つの習慣」とは?全体像とそれぞれの習慣について解説

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